『新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで (ブルーバックス)』2014/12/19
審良 静男 (著), 黒崎 知博 (著)
免疫の仕組みや、研究の最前線状況を知ることが出来る本です。
20世紀末から21世紀にかけて、新しい研究成果が続々発表され、免疫の「常識」は大きく変わったそうです(例:自然免疫が獲得免疫を始動することや、自然炎症の概念など)。この本は、これら最新の知見をふまえて、免疫という、極めて複雑で動的なシステムの中で、無数の細胞がどう協力して病原体を撃退するのか、その流れがよくわかるように解説してくれます。
とは言っても、「免疫」はとても複雑な仕組みですし、解説にどうしても専門用語を多用せざるを得ないのですが、著者のお二人は、読者が理解しやすくなるように、あらゆる努力をしてくれています。
たとえば、「1章 自然免疫の初期対応」は、病原体の侵入場面から始まります。ころんですりむいたひざ小僧から病原体が侵入したとき、最初に立ちはだかるのは食細胞で、食細胞がいかに病原体に立ち向かうかが描かれます。こうして免疫ストーリーの大きな流れを、分かりやすく具体的に解説してくれるのです。もちろん解説には、イラストや写真、表も添えられています。
また、ちょうど中間あたりの5章で、いったん免疫の流れを整理してくれます。専門家でない一般人としては、このあたりで、すでに「いっぱい・いっぱい」感に打ちのめされていた(汗)ので、この一時休止がとても嬉しかったです。
そして後半は、まだ解明できていない免疫の仕組みについての話題になっていきます。このように、解明されたことだけでなく、解明途中のことについても紹介するというのは、研究の「最前線状況」を紹介する時に、とても大事な姿勢だと思います。
免疫というのは、人間の体を健康に保つ上で、とても大切な働きをしているものだと思います。この本を読んで、人間の体がいかに複雑で、いかに良く出来ているかに感心し、生命誕生から、よくぞここまで進化してきたのだなあ……と、ため息がでました。
またB細胞では、抗原認識受容体に突然変異を起こすことで多様な抗原に対応するという解説を読んで、突然変異というのは、色んな意味で役に立つ仕組みなのだなとも感じました。もっとも突然変異というのは、生命にとっては非常に危険な仕組みでもあるので、本来、細胞には、突然変異を修復する仕組みが備わっているそうですが……。
免疫の仕組みの概要が理解できるだけでなく、さまざまなことを考えさせてくれた、とても勉強になる本でした。読んでみてください。