『2紙の発明と日本の和紙 和紙の起源と世界の紙の歴史を調べよう! (世界遺産になった和紙)』2015/6/27
紙の博物館 (監修)
「世界遺産になった和紙」シリーズ2作目で、和紙が、日本の歴史の流れのなかで、どのように全国への広がっていったかなど、日本独自の紙づくりの確立について解説してくれます。
日本にはじめて紙が入ってきたのがいつかについては、『古事記』に、「285年に百済の王仁によって、応神天皇に『論語』などがもたらされた」と書かれていることから、この『論語』が、はじめて入ってきた紙であるという説があるそうです。
また「日本製」の最古の紙としては諸説あるようですが、615年に聖徳太子によって書かれたとされる法華経義疏が最古と言われていて、それに次ぐ紙は702年に作成された戸籍用紙なのだとか。奈良の正倉院にはその戸籍用紙が残されています……ちゃんと保存すると、昔の紙はこんなに持つものなんですね!
そして日本の和紙独特のものとして、「流し漉き」の製造方法があるそうです(中国から伝わった紙漉きの方法は「ため漉き」と呼ばれるやり方)。この「流し漉き」によってできた紙は、「ため漉き」にくらべ、じょうぶでなめらかで美しいといわれているのだとか。
その秘密の一つは「ネリ」。トロロアオイの根やノリウツギの樹皮などの粘液のことですが、この「ネリ」は、流し漉きの際、原料の繊維を均一にし、また、うまくからみあうように水のぬけるのをおそくするそうです。
和紙の製造過程の動画を見るたびに、「どうして漉いて濡れたままの紙を、その直前に漉いて作った紙の上に直に置いちゃうんだろう? くっついてしまわないのかな?」と不思議に思っていましたが、この本には、まさにそのことが書いてありました。
「このネリはちょっとしたマジックのようです。液状のときはとてもねばついているのに、かわくとねばりがあとかたもなく消えてしまいます。(中略)漉き上げた紙をぬれた状態で重ねても、ネリのはたらきで、紙同士がくっつかずにはがすことができます。」
そうだったんですか! 植物の化学の力って、なんか凄いですね……。
和紙や紙の歴史をフルカラーの写真やイラストで、分かりやすく知ることが出来る本でした。読んでみてください。