『トヨタの現場力 生産性を上げる組織マネジメント』2017/11/30
(株)OJTソリューションズ (著)

トヨタが80年の経験から培った人材育成と組織改善スキルを詳細に紐解きつつ、「現場の組織=現場力」を醸成・強化するための実践手法を解説してくれる本です。OJTソリューションズがトヨタ方式でコンサルティング指導し、生産性向上、利益向上に成功した350社以上の豊富な事例を織り交ぜながら具体的な目的と手法を解説しています。
内容(目次)は、次の通りです。
第1 章 「強い現場」をつくる改善活動
第2 章 【準備】「現場を変化させる力」を確保する
第3 章 【始動】白地図に絵を描く
第4 章 【推進】「重い車輪」を動かす
第5 章 【横展開】活動を高速回転させる
第6 章 【定着】「歯止め」で活動を持続可能にする

この本は、「よりよい現場にしたい」と考えている人が、一歩踏み出すことを後押ししてくれます。「理論やデータだけでは『現実の組織』は動かない」……組織の成長を「しくみ化」するトヨタの実践手法(概念ではなく、現場での実践のために必要な取り組みのステップ)が、第2 章「準備」から第6 章「定着」まで、順を追って記載されています。
それに先立つ「第1 章 「強い現場」をつくる改善活動」は、「目指すべき最終ゴールと前提となる必要要素について」に関するもので、「強い現場のあるべきは「標準」で変わる」そうです。まず「標準」がなければならず、「標準」のない現場は、それを作ることから始めます。「標準のあるメリットは、現在の状態の正常・異常が判断できること」だそうで、確かに、その通りだと感じました。「標準」がそもそもないならば、「改善」したのかどうかの判断も曖昧になってしまうだけでなく、どう「改善」するのが効果的なのかすら、分からないかもしれません。
トヨタの本らしく、分かりやすくて実践しやすいヒントが満載でしたが、中でも参考になったのは、トヨタで実践されている5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)活動の目的は、「キレイにすること」ではなく、「現場の問題を見える化する」ことにあるという点。確かに……乱雑な現場では、問題も(モチベーションも)埋もれてしまいますよね……。
そして「改善活動で得られる4つの効果」としては、次のものがあるそうです。
1)製造現場以外でも応用可能
2)問題解決で競争優位性が高まる
3)将来を見据えた対応ができる
4)貴重な人的リソースを最大限に活用できる

このうち「3)将来を見据えた対応」の中の「顕在化した問題解決だけでは万全でない」という指摘も重要だと思いました。製造現場では不良への対策として、「入れない」「作らない」「流さない」の3つがあるそうですが、この中の「流さない」に対応しているだけのケースが多いそうです。でもこれは、「3回ある問題解決チャンスのうちの2回を失い、根本的な対応ができていない危うい状態」なのだとか。……確かに、そうですね。「流さない」は最終ラインなので必須かつ最重要ではありますが、これより前の工程で不良を見つけた方が、手戻りが減って効率が上がることは間違いないのですから……。
その他にも、「人を責めるな、しくみを責めろ」とか、「人的対策より物的対策を重視(物的対策はその効果が薄まることはないが、人的対策は個人が慣れてしまって意識が低くなることがある)」など、参考にしたい記述が満載で、教科書として何度も読み返したい本だと思います。
最後に、本書の中で心に残った「トヨタの現場で語りつがれてきた言葉」を紹介させていただきます。
「仕事に行くのではなく、知恵を出しに行く」
「ムダな作業をさせることは、その人の人生をムダにすること」
「仕事とは、作業+改善である」