『北極がなくなる日』2017/11/27
ピーター ワダムズ (著)、Peter Wadhams (原著)、武藤 崇恵 (翻訳)、榎本 浩之

長年にわたって海氷研究を行ってきたワダムズさんが、北極の氷の減少に警鐘を鳴らし、温室効果ガスの増加を減らすための生活や技術開発に取り組むよう一般市民に呼び掛けている本です。
特に2000年以降は、科学者の追随を許さないかのような急速で多様な変化が北極で起きているそうです。海氷にはまだまだ発見されていないシステムや、理解されていないメカニズムが多いなか、ワダムズさんたちの研究で解明されてきた状況が、本書の中では写真付で説明されていきます。冒頭16ページは、北極海などで撮影された氷の写真や、図表などで、これらの貴重なデータを元にした研究で明らかにされたことが、詳しく解説されています。
本書の前半は、「海氷がどのように形成されるか」など氷の性質に関する解説や、「地球の氷の歴史」、「現代の氷期のサイクル」などの科学的な解説で、すごく勉強になりました。
北極海の夏期に氷が存在しないと、次のような潰滅的な影響がふたつ出るそうです。
1)「アルベド(太陽の入射エネルギーが宇宙へ反射される率)」が現在の60%から10%へと低下し、今後の北極海および地球全体の温暖化を加速する。
2)地球にとって不可欠な北極海の空気調節機能が失われる。

そして、このような事態を避けるために、私たちが何をしなければならないかについてが、「第13章 地球の現状」、「第14章 戦闘準備だ」で語られていきます。

……が、「北極は本当に消滅しての危機に瀕しているのか?」に関しては、実は「瀕してなどいない」という意見もあることを、ワダムズさん自身も認めた上で、地球を救うために、「気候変動否定派たちがたれ流す嘘と欺瞞を、全身全霊の力で捨て去ってほしい。」と願っているようです。普通の人々は、このような「疑いを示唆される」だけで、何もしない傍観者になりがちなのだとか……確かに(汗)、「地球温暖化との戦い」にかなりのコストがかかる以上、「はっきりした消滅危機の証拠」がない間は「様子見」をするのが、むしろ賢い判断なような気もします。
だから「第13章 地球の現状」で提案される「ジオエンジニアリング(日光を直接ブロックするするか、地球のアルベドを増加させて放射収支を変えることで、人工的に地表の気温を下げる一連のテクノロジー)」や、「ダイレクト・エアー・キャプチャー(DAC):ポンプで集めた大気の二酸化炭素だけを除去し、液化して貯蔵するか、化学的にほかの、できれば有用な物質へと変化させる方法」などを、すぐに実施すべきかどうかの判断は出来ません。
だからこそ、「第14章 戦闘準備だ」で提案される「北極に出現した物理的変化などによる影響をすべてまとめるコンピューター・モデル」は必要だと思います。極寒の地・北極での継続的調査は困難でも、気象衛星などを活用したデータを集積・活用して、「地球は本当に温暖化しているのか」を見極める必要があるのではないでしょうか。
でも、地球温暖化が本当に驀進中ならば、そのように「見極めている」間にも、潰滅的な状況になっていくのを加速させてしまうのかもしれません。それでも、必要以上に「不便な生活」を耐え忍ぶ必要があるのだろうかとも思います。これまでも、植物が光合成で酸素を発生させるなどの活動で地球の環境は激変してきたのだし、また、そのおかげで我々人類はいま生きているのですから。「地球温暖化」のせいで、人類が生きにくくなるほどの環境変化が起きるとしても、それに適応した生物が新たに繁栄していくのではないでしょうか。
とは言っても、「様子見」の間は、とにかく私自身に「やれること」も積極的にやっていきたいとも思います。特にワダムズさんが提案している「毎日の生活でなにかを選択するときは、つねにエネルギー、特に化石燃料の使用量が必要最小限のものを選ぼう」については、実践を心がけたいと思います。夏の暑さや寒さを少し我慢することは、「節約」や「体(免疫系)を鍛える」ことにも役に立ちますし……(笑)。また、もしもワダムズさんが言うように、「北極のメタンガス」が無駄に(地球環境に有害な影響を与えるように)放出されていきつつあるなら、一刻も早く、採取して有効活用する方法を考案すべきなのでしょう。
いろいろなことを考えさせられました。気象や環境問題に興味のある方は、ぜひ読んでみて下さい。