『LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲』2013/6/26
シェリル・サンドバーグ (著), 川本 裕子 (その他), 村井 章子 (翻訳)

新規大卒者の50%が女性となってから30年が経過したにもかかわらず、いまだにアメリカの政府や企業のリーダーの大多数は男性で、社会生活に大きな影響を与える決定において、女性の声が平等に反映されにくい状況が続いています。なぜ女性リーダーは生まれにくいのか? フェイスブックの女性COOとして知られるサンドバーグさんが、自らの体験から、改善への「一歩」の踏み出し方を教えてくれる超ベストセラーの話題作です。
サンドバーグさんと言えば、フォーチュン誌の「世界で最も有力な女性50人」、タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」にも選出された超有名な「デキる」女性で、「どうしたら女性は仕事で成功できるか(女性リーダーが少ないのはなぜか)」というテーマでのTEDの講演を見たことのある方も多いのではないでしょうか。表紙写真でもわかるように美しくてスタイルも良く頭も良くて職業的に高い地位にあり、夫と二人のお子さんとともに幸せな生活を送っている……そんな「完璧すぎる人生」を送っている方です(残念ながら夫のゴールドバーグさんはその後の2015年に亡くなりましたが……)。
でも彼女は女性の社会進出が進んでいるアメリカの人だからなー、日本の事情とは違うよ、と思っていましたが(汗)、意外にも、アメリカでも職場で「女性差別」を感じることは多いのだとか。例えばサンドバーグさんは、資金調達の会合先のマンハッタンの瀟洒なオフィスで「女性用トイレがない」という現実に直面したことがあるそうです。会合相手の男性は、その事実に気づいてすらいなかったとか。
また「できる女は嫌われる」そうで、「成功した男は男からも女からも好かれるが、成功した女は男からも女からもあまり好かれない」傾向があるそうです。……うーん、確かに。特に女性上司の場合には、男性上司よりも「きめ細かい配慮や優しさ」を求めてしまう傾向があるような気がします。どうしても潜在意識レベルで、女性上司には「優しい母親」像を求めてしまうのかもしれません。女性上司の言動や行動にムカついた時には、それを男性上司がやったらどう思うのかを想像してみるべきなのでしょう。
サンドバーグさんは、こうした「女性らしさ」のステレオタイプが数々の偏見を生んでいることを認めた上で、女性の社会進出を促すために、次の「一歩」を踏み出す勇気をもつことを教えてくれます。私自身、潜在意識のレベルで、「男性は強く、女性は優しく」あるべきということが、「差別」というよりも「常識あるいは真実」として刷り込まれているような気がします。でも、こういう偏見(社会的な現実)から目を背けても何の解決にもならず、それを「現実にあるもの」として受け止めた上で、問題解決をしていかなければならない……そう教えてくれるサンドバーグさんの理性的態度に、とても共感を覚えました。
サンドバーグさんは、現実問題として「学者や評論家や政治家は(大半は男である)、育児は最も重要で最も価値のある仕事だとひんぱんに口にする。だが、仕事を離れた女性は大きなペナルティーを払わされることになる。」ことを踏まえた上で、「(子育てのために)辞めなければならないときまで(仕事を)辞めないで」と言います。たとえ一時的に保育費用がかさんで給料より高額になってしまったとしても、それは将来のための投資だと考えた方が合理的なのだと。
そして自らの子育て経験を通して、「すべてをこなそうとしたり、さらには完璧にやろうと考えたりすれば、まちがいなくみじめな思いをすることになる。完璧主義は大敵である。」、「夫の育児参加についてアドバイスを求められたとき、私はいつも「彼に任せなさい」と言う。(たとえ夫がうまく出来なくても任せ続けた方がいい)」「何度もやるうちにはベストの方法に行き着くにちがいない。だがあなたのやり方を強制したら、結局はあなたがやらなければなくなる。」と言っています。
こんな感じで、子育てとキャリアの両立に悩む女性の参考になるアドバイスが、本書の中にはたくさんありました。
個人的には、女性の「うまい交渉の仕方」へのアドバイスがすごく参考になりました。「女性は他人に気配りを示すものと考えられており、自己の利益を追求したり強く自分をアピールしたりすれば、男にも女にも眉をひそめられることになりかねない。」ので、それを考慮して交渉をするとうまくいくそうですが、女性だけでなく男性にも「気配り」が求められる(ような気がする)日本人の交渉にも効果的だと思います。それは「にこにこキッパリ」スタイルだそうで、「微笑む、称賛や気遣いを示す、共通の利害に訴える、より大きな目標を強調する、対決するのではなく問題解決のために交渉する姿勢を示す」のだそうです。……確かに。これを心がけると、お互いに気持ち良く交渉できそうですね(微笑)。
長い間、ドイツを堅実な繁栄に導いているメルケル首相を見ても明らかなように、女性には高い能力があると思います。また「ブレグジット(欧州連合からのイギリス脱退)」というとても困難な社会情勢の中で選ばれたのが女性のメイ首相だったということは、男性も実は「女性の有能さ」をあてにしている証拠(実例)ではないでしょうか。女性は男性に比べて「リスクを取りたがらない」「新しいことにチャレンジしない」「自らをアピールしない」傾向があるようですが、「自分のポテンシャルをもっと引き出す」ために、「一歩」を踏み出して、自分の幸せとキャリア上の成功を手に入れる努力を、もっとすべきなのでしょう。
フェイスブックのザッカーバーグさんが言うように、「この本は、他人から最高のものを引き出すノウハウと既存の情報とを組み合わせるという彼女の才能が発揮されている。とても優れていて、それでいて正直で、おもしろい本である。この本は、とりわけ男性に読んでもらいたい。とくにより良いリーダーに、より優れたリーダーになりたい人たちにお勧めである」だと思います。リーダーを目指している女性はもちろん、男性もぜひ読んでみてください。さあ、一歩前へ!