『トコトンやさしいナノセルロースの本 (今日からモノ知りシリーズ)』2017/11/28
ナノセルロースフォーラム (編集)

鋼鉄の5倍の強度を持ちながら重量は5分の1、樹脂との複合材料化での製品実用化も急速に進みつつある「ナノセルロース」。その成り立ちから研究開発・製品化・技術動向までをイラストで分かりやすく紹介してくれる本です。
ここではこの本を、「紙」のジャンルで紹介させていただいていますが、「ナノセルロース」は、紙と同じようにセルロース繊維から作られるものなのに、実は、性質はかなり違っているので、もはや「紙」ではないようです。
「セルロースは植物の主成分です。(中略)植物中でセルロースは繊維として存在し、細胞の中でヘミセルロース、リグニンと複雑に絡み合っています。人間はこのセルロース繊維を取り出し、古くからさまざまな用途に使ってきました。例えば、紙や綿繊維はセルロース繊維からできています。」
「ナノセルロースは植物の成分の1つであるセルロース繊維を取り出し、細かくほぐすことで作られます。」
「ナノセルロースとは、ナノサイズのセルロースの総称です。ナノサイズのセルロースとは縦・横・高さのいずれかが1~100ナノメートルのことです。(「セルロース繊維」は、「ナノセルロース」より径が太く、20~40マイクロメートルと言われています。)」
つまり「セルロース」と「ナノセルロース」は、大きさが違うのですね。
そして古くから紙や綿として利用されてきたセルロースを、ナノサイズの微細繊維とすることで、高強度、粘性、ガスバリア性、熱安定性などの高機能を与えることが出来るようになるそうです。
「ナノセルロース」の応用範囲は極めて広く、その一部としては以下のようなものがあります。
・プラスチックへの添加(高強度・軽量複合材料を作る)
・ゴムに添加することで伸縮性を保ったまま弾性率を増加させ、熱膨張を減少させる。
・強度と白色度を高める製紙用添加剤
・プラスチックフィルムにコーティングして印刷性能を改善、紙のサイズ剤に添加して改善
・ガスバリアフィルム、ガスバリア紙による包装
・コンクリートセメントの添加剤(硬くなるタイミングを自在にコントロールできる)
・塗料・インキへの添加剤
・デバイスの小型・軽量化を促す高誘電率ナノペーパー
・感度の良いバイオセンサー
・再生医療を支える創傷皮覆材・細胞培養基材
・食品添加物として粘性、保水性、保型性、分散安定性を与える。
などなど……。
いろんなものに、いろんな応用が出来る夢の素材のようです。
意外だったのが、食品としての「ナノセルロース」。寒天のような食感で人気のあるデザート「ナタデココ」は、バクテリアが作る天然のナノセルロースなのだそうです。(ちなみに「ナノセルロース」の製法としては、植物を「分解」して取り出すのが主流ですが、微生物を使って「合成」する方法もあり、「ナタデココ」は、合成によるナノセルロースなのだそうです。)うーん、バクテリアが作ってくれるデザートですか……そう考えるとちょっと微妙な気分になりますが、「ナタデココ」、食感が楽しくて、なかなか美味しいデザートですよね……。
そしてもう一つ意外だったのは、「透明フィルムも作ることが出来る」こと。紙や綿と同じようにセルロースから出来ているのに、なぜ透明にできるの?と疑問に感じましたが、「径が小さいナノセルロースは光散乱しないため透明に見える(光の波長の1/10以下くらいの大きさの物体は、透明材料に混ぜられても光の散乱が起きない)」のだそうです。
夢の素材、ナノセルロース。2017年時点では、まだ国際規格も正式には決まっていないほど新しい素材ですが、いろんな応用ができるだけでなく、もともと天然にあったセルロース繊維をナノサイズにしたものなので、環境にも優しいという素晴らしい素材のようです。今後の活躍を大いに期待したいと思います。