『銀河ヒッチハイク・ガイド』2005/9/3
ダグラス・アダムス (著), 安原 和見 (翻訳)

平凡な英国人アーサー・デントが、たまたま地球に居た宇宙人フォードと宇宙でヒッチハイクをするというSFコメディ、映画にもなった大人気の傑作SF小説です。イギリスっぽい知的で上品な(シュールでブラック)ユーモアに溢れていて、何度読んでも楽しめる作品です。(下ネタもほとんどないので、電車でも安心して読めます(笑)。ただし夢中になり過ぎて、到着駅で降り損ねる可能性はありますが……。)
この『銀河ヒッチハイク・ガイド』が大好評だったので、続編が作られて、次のような全5巻構成で出されています。どれもとても楽しめます☆
(正篇)
『銀河ヒッチハイク・ガイド』
『宇宙の果てのレストラン』
『宇宙クリケット大戦争』+(外伝の短編)「若きゼイフォードの安全第一」(『宇宙クリケット大戦争』所収)
(続篇)
『さようなら、いままで魚をありがとう』
『ほとんど無害』
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
さて物語は、バイパス工事のためにアーサーの家が破壊されそうになっている場面から始まります。でも実は……銀河バイパス建設のため、地球自体が消滅の危機にあったのです(!)。ということで、地球最後の生き残り男となったアーサーは、たまたま地球に居た宇宙人フォードと、宇宙でヒッチハイクをするハメになるのです。必要なのは、表紙に「パニくるな」と書いてある「銀河ヒッチハイク・ガイド」と、何にでも役立つタオル……。
ちなみにこの宇宙人フォードは、「銀河ヒッチハイク・ガイド」の調査員で、改訂版を出すために地球に滞在していたのですが……改定前の版では、地球については「無害」の一言が掲載されていたのが、改定後には、「ほとんど無害」に変えられたとか(苦笑)。
でも二人がヒッチハイクをしていくうちに、意外な事実が明らかになっていきます。地球は「ほとんど無害」程度の存在ではなかったのです!
実は地球は、「生命、宇宙についての深遠な疑問」を計算するために作られたコンピュータだったのです。もっともその答えの方はすでに「42」と出されているのですが(笑)。その答えは、最高のコンピュータ(ディープ・ソート)が750万年かけて計算したものでした。でも、待ちに待った答えが「42」と出された時、計算結果に納得いかない人々に対して、ディープ・ソートは「これが答えなのは絶対にまちがいありません。あえて正直に申し上げれば、なにが問いなのかあなたがたはよくわかっていない。それが問題なのだと思います」と言い返し、人々の要望に応えて今度は「究極の問い」の方を計算させるために、新しいコンピュータとして地球を作ったのでした……。
そして、その答えがあと5分で出ると言う時に、理不尽にも地球は銀河バイパス工事のために消滅させられたのです(が、これもまた陰謀だったことが、シリーズ続編などで明らかになっていきます)。
この「答えは出ているが説明はできない」という話、なんだか人工知能のディープ・ラーニングみたいですごく面白かったのですが、この物語が最初に発表されたのはなんと1978年、もちろん人工知能のディープ・ラーニングなんてなかった時期なんですよね。すごーい☆ さすがSF、科学を先取りしてるう☆
そして地球は「究極の問い」を計算しているコンピュータ……なるほど、それでその素子である私たち人間は、やたらと「宇宙」だとか「人生」だとかの意義を、哲学的に問いたがるわけなのか……宇宙がどれくらい広かろうが、無から始まっていようが、いつ終わりを迎えようが、宇宙時間に比べれば「あっ」という間に終わってしまう太陽系の中のちっぽけな星で、たかだか100年ぐらい生きているだけなら、なにも関係ないはずなのに……。
もしかしたら、人間の子供たちの多くが、九九の計算を覚える時に、「6×7(=42)」でつまずくことが多いのも、そのせいかもしれませんね(苦笑)。
ヘンな登場人物や、妙な機械や理論がどんどん出てきて、「真面目にふざける」ってこういうことなんだなーと感心させられる物語です。
例えば続編の『宇宙の果てのレストラン』に出てくる「未来を見通すことが出来るエレベーター(この機能があるため、人がエレベーターに乗りたいと思うより早く、エレベーターはその人のいる階に停止できるそうです)」とか、「危険感知サングラス(危険にぶつかっても気を楽にしていられるように、危険を察知すると真っ黒になって危険物を見ないで済む機能つき)」とかには、あまりの馬鹿馬鹿しさに呆れるとともに感心させられてしまいました(笑)。さらに「宇宙の果てのレストラン」に至っては、宇宙の最期をショーとして楽しむために、ゆっくり「時の最外線を前進し、また後退」しているのです(!)。物語の登場人物の一人で、あちこちで置いてきぼりをくう、鬱病ロボットのマーヴィンも最高です。
……本当に、アホなネタを真面目に語らせたら、イギリス人の右に出る者はありませんね! (いや、もしかして大阪人なら勝てるかも?)
知的(?)ユーモアSFの大傑作作品です。お勧めです☆