『発掘された日本列島2017 新発見考古速報』2017/6/5
文化庁 (著)

日本全国の発掘調査を写真とともに解説してくれる本で、「発掘された日本列島2017」展の公式図録です。
年間8,000件超の発掘調査の中から、文化庁文化財調査官が注目すべき遺跡を選りすぐり紹介する「発掘された日本列島」展(今年は東京都、青森県、三重県、愛知県、長崎県で開催)。この公式図録は、実際に発掘を行った調査員が記事を執筆しているそうです。
この本は、なんといっても各ページに大きな写真があるのが魅力☆ ほぼ全ページにカラー写真があり、とても見応えがあります。三部構成になっていて、最初は「新発見考古速報」。旧石器時代から現代まで全国から17の遺跡の速報展示です。そして、特集1:復興のための文化力、特集2:発掘された水中遺跡、となっています。
最初の「新発見考古速報」から、興味をそそられる発見がいっぱい☆
山形県の押出遺跡(縄文)からは、素晴らしい模様付の漆塗り土器が出土したそうです。壷の形も素晴らしいのですが、赤色漆の上に黒色漆で文様が描かれています。流れるような線と点で構成されていて縄文自体の人の優れたデザインセンスが分かります。また奈良県の唐招提寺旧境内(古代)からは、美しい模様の三彩瓦が大量出土したとか! 瓦に三彩を使うなんて……どれだけ壮麗な建物だったんでしょう。国産だったのでしょうか? さらに北海道のオニキシベ2遺跡(中世)からはガラス玉の他、鶴のスタンプが重なって施されている漆器が出土したそうですが、同様のものが鎌倉市の遺跡でも出土しているそうで、中世にすでに北海道と交流があったのかもしれません。また島根県の田儀櫻井家たたら製鉄所遺跡(近世)など、すごく興味深い遺跡・出土品の写真が満載です☆
続いて「特集1:復興のための文化力」。これは東日本大震災の復興事業に伴う発掘調査の成果報告です。その直前の特別報告「熊本地震からの復興に向けて」には、被災した古墳の写真がありましたが、修復はとても大変なようです。地震国の日本では、このような文化財の被災は、どの地域でも起こりうることだと思うので、できるだけ早く、最新技術でデジタル保存(VRで見ることが出来るなど)しておくべきではないかと思いました。修復の参考にもなりますし……。
さらに「特集2:発掘された水中遺跡」。日本は島国なので、日本を取り巻く海の中には、古代遺跡だけでなく、沈没船など貴重な文化財が豊富に眠っているそうです。それらの水中遺跡の発掘調査事例の大特集で、これもすごく見応えがありました。
例えば長崎県の鷹島神崎遺跡(中世)からは、蒙古襲来の史実を証明する「てつはう」が発見されたそうです。これは元軍の砲弾で、沈没せずに戦争で使われていたら、多大な損害を受けたことでしょう(台風さん、ありがとう……)。この特集の中には、水中遺跡の調査方法も簡単に解説されていて勉強になりました。
さて、この本の表紙写真は、鹿児島県の倉木崎海底遺跡(中世)のものですが、これらの陶磁器は中国からの船が座礁しそうになって、積荷を投げ捨てたものではないかということです。が、海底の珊瑚の中に埋もれるようになっていて、引き上げるのに珊瑚を傷つけてしまいのでは?と心配になってしまいました。
最後には、「日本発掘最前線2017最新リポート」も添えられていて、面白いと思ったのが、宮城県多賀城市の内館館跡のクロップマーク。クロップマークとは、植物の成長度合いの違いから、その地下に何かがあることを想像させるものだそうで、内館館跡はクロックマーク通りに屋敷跡が発見されたとか……なるほど。写真を見ると、そこは広大な田んぼの中のようですが、こういう特殊な条件の場所じゃないと、植物の成長度合いの違いなんて、なかなか見つけられないかも。
とにかく遺跡のグラビアページが多くて、素晴らしい図録です。歴史に興味ある方には、特にお勧めします。