『世界に誇る鳥獣戯画と日本四大絵巻』2016/12/17
山口 謠司 (監修)
誰が描いたのか、何を意味しているのかが謎に包まれている『鳥獣戯画』を中心に、日本の日本四大絵巻(『鳥獣戯画』『判大納言絵巻』『源氏物語絵巻』『信貴山緑起絵巻』)について、豊富な写真とともに解説してくれる本です。
表紙の絵を見て、「ああ、あの絵か」とピンときた方も多いと思います。現存最古の絵巻物の一つで、日本の漫画のルーツと言われるだけでなく、その絵柄の活き活きした面白さに魅せられる人は多いのではないでしょうか。
もちろん私も、『鳥獣戯画』を最初に見た時から、「うさぎ可愛いーい」「カエル面白ーい」とたちまち魂を奪われました。ただ造形的に可愛らしいだけでなく、人間っぽいのに動物らしさもあるリアルな動きで、何かを喋ったり笑ったりしながら、いまにも活き活きと動き出しそうな感じに満ちていて……ずーっと眺めていたくなります。あまりにも楽しそうなので、仲間に入れて欲しくさえなりました(笑)。たぶん絵師自身も、愉快な気分で描いていたんでしょうね☆
このムックでは、『鳥獣戯画』・甲巻の全貌として全体写真が掲載されているだけでなく、各部の大きな写真が豊富に掲載されています。解説はともかく(?)、この写真を見るだけでも、すごく価値があると思います(もちろん解説も充実しています)。
横へ横へと水平に(時間的に)続く絵巻物では、突然に場面を転換させるために、「霞」の表現を間に挟んで、時空感を移動させる手法が取られるのだとか……これ、本当に現在の漫画やアニメに通じる表現法ですよね。筆と墨で描かれた、のびやかで自由な線の形も、動物や背景の描き方も、すべてがすごく魅力的です。日本が誇る歴史的絵巻物として世界中に紹介し、後世へ永遠に残して欲しい大傑作だと思います。
そして日本四大絵巻の残りの三巻(『判大納言絵巻』『源氏物語絵巻』『信貴山緑起絵巻』)についても写真と解説があり、日本の古い絵巻について、いろんな知識を得ることが出来ました。
愉快な『鳥獣戯画』を眺めて癒され、日本の絵巻についての知識も得られるという美味しいムックです。お勧めです☆