『ビジネスパーソンのための 決定版 人工知能 超入門』2016/11/11
東洋経済新報社 (編集)

AIの最新情報(2016年時点)や、各国企業の対応状況を幅広く学べる本です。
『ビジネスパーソンのための 決定版 人工知能 超入門』というタイトル通りに、AIについて、専門家ではない普通のビジネスパーソン向けに、分かりやすく解説してくれていると思います。
まず「1 AIはここまで来た!」では、AIの現状や可能性などを概観できます。AIの開発経緯や用語解説もあるので、AIに関する基礎知識も学ぶことが出来ると思います。冒頭の「徹底対談 天才棋士・羽生善治・棋士vs.カリスマ研究者・松尾豊・東京大学准教授―ディープラーニングの先、未来で何が起きるのか」もすごく面白かったです(この記事はAIに関する簡単な解説記事にもなっています)。
そして「2 海外企業の戦略はこれだ」では、AIに力を注いでいる海外企業の現状が現地ルポを含めて紹介されます。グーグル、GE、マイクロソフトなど、AIでおなじみのアメリカ(多国籍)企業の他、AIを含む「インダストリー4.0」を展開するドイツのシーメンス、ボッシュなども紹介されています。
さらに「3 日本企業最前線」では、日本企業のAIへの取り組みが紹介されます。NEC、NTTグループ、日立などの電機・通信関係企業はもちろん、ソフトバンクやヤフー、トヨタ自動車、コマツ、さらには日本紙パルプ商事やメガバンクなど、非常い幅広い分野での活動が紹介されているので、類似した企業の活動から、AIへの取り組みへのヒントを掴めるのではないでしょうか。
大企業だけでなく、中小企業とAIについても、「中小企業復活への挑戦 IoTの可能性を探る」という記事があり、製造業4社をモデルケースとした研究会の活動が報告されています。
そして最後に「4 機械と共存するために」では、「ひそかに進む金融支配」「49%の労働は代替可能(AIに雇用を奪われる)」「AIブームに潜む死角(自動運転車の死亡事故など)」などのテーマで、AIの暗い側面(問題点)も紹介されています。
この本一冊で、AIに関する基礎知識や将来性、各企業の最新動向、問題点など、とても幅広く知ることができると思います。
個人的にとても興味深かったのは、コマツの「建機と現場情報を一元管理 無人自動化へAI活用を視野」という事例。GPSで建機の稼働状態を把握する、鉱山での自動ダンプトラック運行システム、ICTで半自動化したブルドーザーと油圧ショベルや、ドローンでの現況測量など、「未来感」あふれる内容に、わくわくさせられました。郊外での大規模住宅地開発など、他の車や人が入り込まないような場所での開発もあると思うので、そういう場所でなら自動運転車(建機)の活動も容易だと思いますし、それによってどんどん実用化への技術を蓄積できそうです。しかもそれが進めば、鉱山などの危険な場所だけでなく、災害現場での復旧作業にも使えそう……建設現場とAIはすごく相性がよさそうです。
また富士通の「ハードもソフトも手掛ける総合力こそが最大の強み」という記事にあるように、AIの能力を「現実に活かす」時には、ソフトだけでなくハードも必要なので、現在はまだアメリカに大きく後れを取っている感があるAI関連産業ですが(汗)、今後はきっと日本企業もAI業界をリードしていくのではないかという期待が膨らみました(笑)。
その他にもNECの「FPGAによる超低消費電力AIの開発」に関する記事。FPGAを使ったアナログ型の演算処理を使って消費電力を抑える試みのようですが、実はこれには「数字が大きくなると正確性が落ちる」という問題があるそうです。それでも「これはAIにとっては大きな問題ではない」と考えているとか……この話、『量子コンピュータが人工知能を加速する』に出てきた量子コンピュータと同じような考え方で、とても興味深く読ませていただきました。「コンピュータ=正確な答えを出す」という常識的考え方だけでなく、「AI関連のコンピュータ=「そこそこ」の答えを出す」ことを受け入れる姿勢が求められるのかもしれません。まあ「たまに間違うこともある人間」だって、現在ではまだ色々な面でコンピュータよりずっと有能なので、「そこそこ」の答えしか出せないAIだって、使い方に気をつければ、「十分使える」と思います(笑)。
とても参考になる本でした。112ページと意外に薄い本なので、通勤中でも読みやすいと思います。ぜひご一読ください。