『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』
カレン・フェラン (著), 神崎 朗子 (翻訳)
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「コンサルタントあるある」的な本です。「あー、そうそう。コンサルタントって、そういうところあるよね」というコンサルタント業界の暴露的な内容で、そうとうな物議を醸すこと間違いなしと思われます(汗)が、そんなことは覚悟の上なのでしょう。それよりも、「もっとコンサルタントとうまく付き合って欲しい」という強い願いが感じられました。
著者のカレン・フェランさんはマサチューセッツ工科大学及び同大学院を卒業後、大手会計事務所系コンサルティングファームのデロイト・ハスキンズ&セルズや戦略系コンサルティングファームのジェミニ・コンサルティングで活躍。その後、ファイザーやジョンソン・エンド・ジョンソンなどの大手企業でマネージャーとしての経験を積んだ敏腕コンサルタントです。
長い経営コンサルタント経験を通じて、彼女自分がクライアントに勧めてきた「戦略計画」「最適化プロセス」「業績管理システム」などのメソッドについて、その経緯と理論を振り返りながら、コンサルタントがどういう発想で改革を持ち込み、それが企業にどんな影響を与えたかについて、反省をまじえながら具体的に詳細に語ってくれます。
これを通じて言いたいことは、どうやら「経営の重要な部分を他人任せにしたいという動機でコンサルタントを使っても、絶対にうまくいくはずがない」ことのようです。
また、効率化のための最適化手法、数値目標や、人材開発プログラムの弊害についても警鐘を鳴らしています。数値目標については、「評価目標についてしっかりとわきまえておくべきなのは、指標は手段であって目的でなないことだ。数値目標が悲惨な結果を招いているのは、それが会社にとって本当に重要な目標に取って代わってしまったからだ」と言います。
また、本来は「従業員にやる気をださせる」はずの人事評価システムが、実は優秀な社員のやる気をなくさせたり、落ちこぼれを排除したり、全従業員を「普通」にさせてしまうだけだったりと、コンサルタントの勧めで「数値評価」を始めると、人々は「数値評価」に(過)適合する(無理に頑張る・ごまかす・退職する)よう、懸命(あるいは賢明)な行動をとり始めて、効果よりも弊害の方が大きくなってしまうことが多いようだと言って、それらの具体例を紹介しています。
一般的に、コンサルタントは、こういう「数値ですっきり簡単&公平評価」をしたがりますが、本当に企業に必要で効果的なのは、実は「問題意識を持って、従業員同士が話し合うこと」「各部門が交流すること」ではないかと、カレン・フェランさんはこの本の中で主張しています。
その他、この本の中では、危険なコンサルタントの見抜き方なども教えてくれるなど、本当に参考になる情報(意見)が満載です。
ところで、この本では、コンサルタントがしてきた間違った指導への懺悔としての事例紹介が多いのですが、だからといって、即、コンサルタントは不要だということにはならないと思います。なぜなら、経営には、「人知の及ばないことにまで判断を求められる」面があるからです。
10年後どころか、来年でさえ「何が流行するか」「売れる商品は何か」の予測が出来ないのが現実です。それなのに、いままでにない画期的新商品であっても、売り上げ予測が立たなければ、原材料の調達量も計算できないし、工場の稼働計画も立てられないのです。だから……昔の王様が戦争や飢饉のときに、占星術などの占い師に頼ってきたことがあるのと同じように……経営計画を立てる側の立場の経営者たちが、「業界知識に詳しく、経験豊富で、頭の良い(と思われている)コンサルタント」の意見を聞きたく(頼りたく)なるのは、人間として当然のことではないでしょうか(むしろ正しい態度だと思います)。
また外部の人間の方が、利害関係がないので、社内の問題を指摘しやすいということもありますし、部門同士を交流させるきっかけを作りやすい面もあります。
コンサルタントは、うまく使えば、会社を良い方向に向けさせられると思います。この本を読んで、コンサルタントとの付き合い方をもう一度よく考えたいと思いました。
最後に、参考までに、この本の目次を以下に紹介します。
【目次】
はじめに 御社をつぶしたのは私です
Introduction 大手ファームは無意味なことばかりさせている
第1章 「戦略計画」は何の役にも立たない
第2章 「最適化プロセス」は机上の空論
第3章 「数値目標」が組織を振り回す
第4章 「業績管理システム」で士気はガタ落ち
第5章 「マネジメントモデル」なんていらない
第6章 「人材開発プログラム」には絶対に参加するな
第7章 「リーダーシップ開発」で食べている人たち
第8章 「ベストプラクティス」は“奇跡”のダイエット食品