『仮想通貨』
岡田 仁志 (著), 高橋 郁夫 (著), 山﨑 重一郎 (著)
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仮想通貨の技術や法律、制度について総合的に解説してくれる本です。
入門書ではないので、かなり難しい用語などが出てきますが、仮想通貨の意義、技術的な仕組み、暗号技術、問題や事件簿など、幅広く解説してくれるので、すごく参考になると思います。
とくにビットコイン関連は、サトシ・ナカモト論文の要点解説や、ブロックチェインとプルーフ・オブ・ワーク法などを図解で説明してくれるので、仕組みが理解しやすいと思います。(※サトシ・ナカモト論文とは、ビットコインの起源となる論文で、1)「信頼できる第三者」による信用を仮定せずに当事者のみで取引が可能、2)電子的取引の非可逆性の実現、3)電子通貨の二重使用問題の解決、という3つの条件を満たすシステムの開発を目的とし、それをピア・ツー・ピアの分散型タイム・スタンプ・サーバによって実現すること、また取引記録の時間的順序を保証する方法として「計算能力の保有量」を利用することを記述したものです。)
なかでも参考になったのは、「第II部 仮想通貨の技術的仕組み――ビットコイン登場の衝撃」のなかの「現在のブロックチェインの問題点」という項目で、ビットコインはタイム・スタンプを利用しているので「2038年問題」を避けられないということ。ビットコインのブロックにはタイムスタンプ用の4バイトの領域があり、UNIX時間が入るのですが、この4バイトの領域が2038年1月19日にあふれてしまうそうです。つまりビットコインは、そうなる前に何らかの方法でこの問題を解決しなければならないようです。
またビットコインなどの仮想通貨を、新しい仮想通貨に緩やかに移行させる方法の実現も課題となっているようです。2038年問題に限らず、仮想通貨に何らかの問題が生じることが予想される場合に、その問題が回避できる新しい通貨に、どのように交換するか。「紙幣」の場合も、印刷技術の向上による偽造の問題で、より偽造しにくい技術をつかった新紙幣に変える必要があり、銀行などで交換出来るようにしてきたのですが、仮想通貨も同様の理由で、交換する必要があると思います。
さらに「第III部 仮想通貨の問題提起と対応」では、仮想通貨に関する議論として、どのようなものがあったかを紹介し、「第IV部 仮想通貨の事件簿」では、マネー・ロンダリング問題や、Mt.Gox社(ビットコイン両替所)破綻なども取り上げています。
そして「終章 仮想通貨の将来と展望」の中で、著者たちは「仮想通貨の目指すべきとされた「匿名性」が、果たして絶対的なものか」ということを問いかけています。
私個人としては、仮想通貨に匿名性は必要ないのではないかと考えています。なぜなら匿名取引が可能な「紙幣や貨幣」が、すでにあるからです。また「仮想通貨」は電子の世界にしか存在しないという「実体」のないものだけに、たとえ「匿名性」を犠牲にしてでも、確実にその金額の取引があったことを証明してくれることや、取引相手が信用できることを保証してくれることの方が重要だし、その方が安心して利用できるのではないかと思います。
今のところはまだ、仮想通貨を積極的に利用したいとは思いませんが、将来は普及する可能性が高いとも感じています。そのための準備として知識を得るためには、とても参考になる本でした。