『トム・ソーヤーの冒険』
マーク トウェイン (著), Mark Twain (原著), 柴田 元幸 (翻訳)
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転んでもタダでは起きないわんぱく小僧のトム・ソーヤーの冒険物語です☆
マーク・トウェインさんの代表作の一つで、有名な児童文学なので、子どもの頃に読んだ方も多いのではないでしょうか。1876年に発行されたすごく昔の本で、しかも時代設定はそのさらに30年ぐらい前なので、超大昔の話なのですが、今でもすごく面白いと思います。なにしろ、ただの楽しい少年物語ではなく、殺人事件や財宝探し、洞窟遭難などのスリルとサスペンスも盛り込まれているのですから。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
さて、海賊暮らしに憧れている、いたずら少年のトムは、ある夜、親友のハックと、イボ退治をするために、死んだ猫の埋葬をして悪魔を呼び出そう(!)と墓場に忍び込みます。(たいそうなイボ退治法です……)。
ところがそこで、殺人事件を目撃してしまうのです!
そして二人の知り合いの酔っぱらいが犯人として捕まるのですが、もちろん二人は彼が無実だということを知っています。でも……本物の殺人犯が怖くて、本当のことを言えないのです。そして……。
と、こんな感じに物語は、どきどきはらはらするサスペンスの中に、ユーモアをちりばめて展開していきます。
しかも、今回、読み直して感じたのですが、このユーモアは、ちょっぴり社会風刺を含んでいるので、子どもよりも、むしろ大人の方が、面白く感じるのではないかと思います。とりわけ夏休み前の発表会のシーンは、自分の子供時代を思い出して、あー、そういうの、あったあった☆と、読みながら大笑いしてしまいました(こそばゆい感じの笑いですが……)。トウェインさんの人間観察の鋭さと、批判精神をユーモアにくるむ手腕の巧みさに脱帽ものです。
物語の冒頭は、トムを探すポリー伯母さんの呼びかけから始まるのですが、この情景を読むだけで、トムがどんな少年か、ポリー伯母さんがどんな人かがよく分かります。(こんな伯母さんに育てられているトムが、悪い子に育つはずがありません(笑))。人物描写の見事さにも感心させられました。
悪い子になりきれない、いたずらっこトムは、自由に生きている友人のハックに比べて中途半端だと言われ、この物語の続編『ハックルベリイ・フィンの冒険』の方が、評価としては高いようですが、この物語にはマーク・トウェインさんらしいユーモア精神が溢れているだけでなく、サスペンス要素も盛り込まれていて、先を読まずにいられなくなります。しかも『ハックルベリイ・フィンの冒険』よりも短いので、読みやすいと思います(笑)。
読後感も爽やかで、子どもはもちろん、大人も楽しめる名作です☆
なお『ハックルベリイ・フィンの冒険』も読もうと考えている場合は、ぜひとも、この作品を先に読んでください。この本の続編の『ハックルベリイ・フィンの冒険』では、冒頭で、『トム・ソーヤーの冒険』の結末のネタばれをしています。