『きみの友だち (新潮文庫)』
重松 清 (著)
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「友だち」って何?と考えさせられる物語です。交通事故で松葉杖をつくようになった一人の女の子、和泉恵美を軸として、その周辺の人々が入れ代わり立ち代わり主人公になって、さまざまな短編が紡がれていき、全体として一つの長い物語になる連作長編です。
交通事故前はクラスの人気者だった恵美が、事故の原因として友人たちを恨んだことで、しだいにクラスメイトから疎外されていく、揺れる心を描いた短編『あいあい傘』から始まり、その弟とライバルの短編『ねじれの位置』、恵美が人気者だったころの友人の堀田芳美が八方美人といわれて友人関係に悩む『ふらふら』と、恵美たちが小学生から若者へと成長する間の物語が、時間を前後しながら重ねられていき、葛藤しながら成長していく子供たちの姿に、思わず自分や友人たちの現在や過去の姿を思い浮かべてしまいます。
そうそう、こういうことって、ありがちなんだよね……。
まるで自分自身もその教室の机に座って、彼や彼女たちの声に耳を傾け、「友だち」から疎外されることを内心は怖れながら、気弱な笑みを浮かべているような錯覚を覚えてしまいました。
転校生の西村さんに、恵美は言います。
「わたしは『みんな』って嫌いだから。『みんな』が『みんな』でいるうちは、友だちじゃない、絶対に」
……強い子だ、と思いました。子供の頃、確かに『みんな』って言葉、よく使っていました。「『みんな』が持っているからアレを買って」と親に欲しいモノをねだったこともあります。(すると、親はいつも、『みんな』って誰?と切り返してきましたが……汗)
『みんな』っていう魔法の言葉に、気づかないうちに縛られていたような気がします。『みんな』に嫌われたくない、とか。『みんな』に恥ずかしい、とか。恵美のこの台詞は、内心では感じていても、あの頃は、とても口には出せませんでした……。
そして一番心に残った短編は、『かげふみ』。
恵美と友だちの由香は、かげふみをしたら最強のコンビだったと思う、と恵美は言います。そして長い階段の途中の休憩所で、彼女が、弟とその相棒に教えてくれる「いいこと」。これは、読んでいてなんだか涙が出そうになって困るほど「いいこと」で……、だからみなさんも、是非、自分で読んで確かめてください。
そして、自分のまわりにいる人たち、好きな人も嫌いな人も、みんな色んな思いを胸に抱えて生きているんだなと感じてくれるといいな、と思います。