『マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則』
ピーター・F・ドラッカー (著), 上田 惇生 (翻訳)
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経営コンサルタントのドラッカーさんが、自らのマネジメント論を体系化した大著『マネジメント――課題、責任、実践』のエッセンスを、初心者向けに一冊にまとめた本格的入門書です。
ドラッカーさんは、「マネジメントの仕事とは実践であり、成果を出すことである」と明確に規定しています。この本では、そのためにマネジメントが果たすべき使命と役割、取り組むべき仕事、さらには中長期的に考えるべき戦略について、具体的に解説しています。
マネジメントの役割は、「自らの組織に特有の使命(目的)を果たす」、「仕事を通じて働く人を生かす」、「自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する」ことだとドラッカーさんは言います。
そして、その属する組織の目的は、人の強みを生産的なものにすることで、組織は、人間や社会に何らかの貢献を行わせ、自己実現させるための手段だそうです。
ところで、この本では、マネジメントの仕方や、組織構造について、さまざまな考察がなされますが、実は、「マネジメントの仕方は組織によって違う」ので、これが絶対だという方法はありません。また「組織構造も仕事の種類によって異なる」ので、唯一絶対の組織構造もないそうです。それでも、マネジメントや組織についてドラッカーさんがさまざまな考察をしてくれるので、その中から参考になるものを選び取って、自分のマネジメントのあり方を考える拠り所になると思います。すごく参考になる記述がたくさんあります。
例えば、組織の活動には、成果活動・支援活動・家事活動・トップ活動の四つの活動があるという項目で、「スタッフ活動は極力小さくしなければならない」、「スタッフ活動を長期の仕事にしてはならない。長期にわたってこの仕事をさせるならば、得られるものは堕落である。正しさよりも頭のよさを大事にするようになる」という言葉には、考えさせられるものがありました。
また、戦略計画とは、「リスクを伴う企業家的意思決定を行う」、「その実行に必要な活動を体系的に組織する」、「それらの活動の成果を期待したものと比較測定する」の連続的プロセスであるということを教えてくれる一方、戦略計画は、「リスクをなくすためのものではなく、最小にするためのものでもない」と言います。
経済活動とは、現在の資源を未来に、すなわち不確実な期待に賭けることで、経済活動の本質は、リスクを冒すこと……この言葉は、心にずんと響きました(汗)。
この本では、ドラッカーさんが自らの経験を通じて熟考してきた内容をもとに、マネジメントの課題と責任と実践にかかわる基本と原則を、総合的に明らかにしています。マネジメントの仕事に迷いが起きたときには、この本を読むと、何かのヒントをもらえるのではないでしょうか。