『脳を最大限に活かす究極の運動法』2021/12/21
久賀谷 亮 (著), 中野ジェームズ修一 (監修)

 仕事への「やる気」、アイデアを出す「瞬発力」、「集中力」「忍耐力」の持続、「疲労」の回復、チームに不可欠な「俯瞰する力」……脳に効果的な運動こそが、仕事のパフォーマンスや日々の生活の質を最大限に上げることを、具体的なエクササイズ方法とともに教えてくれる本で、内容は次の通りです。
PROLOGUE 思えば10年以上、運動らしい運動をしていない
EXERCISE 01 やる気になるには、身体を動かせ
EXERCISE 02 アスリートのように「一瞬で集中する」技術
EXERCISE 03 「まだやれる! 」粘れる脳、「もうダメだ…」と諦める脳
EXERCISE 04 あらゆる「疲労」を解消する科学的結論
EXERCISE 05 「至高の脳機能」を引き出すフィジカルフィットネス
EXERCISE 06 アスリートのように俯瞰し、チーム力を高める
EXERCISE 07 身体を動かし、揺るがない心をつくる
EXERCISE 08 ひらめきトレーニングで「脳の瞬発力」を高める
EPILOGUE スローモーションの世界で
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 ……という内容なので、トレーニング姿のイラストだらけの「エクササイズ本」なのかと思いきや、ほとんど文字ばかりの内容に驚いてしまいました(笑)。なんとこの本、物語形式になっていて、あるIT企業のちょっとダメっぽい36歳のオジサン3人組(+若者2人)がチームを組んで、社長命令で嫌々ながらもトライアスロン(!)に挑むという話になっています(ちなみに一般的なトライアスロンは、水泳1.5キロ、自転車40キロ、ラン10キロを続けてやるスポーツです)。
 まるでやる気になれない3人組は、美女トレーナーのルイーズに導かれ、「やる気スイッチ」を入れるトレーニングから始めるのですが、途中で家族問題やら仕事問題が噴出するなか、それらにも対応できるエクササイズ(!)を組み込みつつ、最終的には、トライアスロンはもちろん、仕事でも成果を上げるという……とってもやる気になる話です(笑)。
「EXERCISE 01 やる気になるには、身体を動かせ」には、「脳のやる気スイッチ(CBI受容体)の押し方」が、「スイッチを入れる脳内物質(エンドカンナビノイド)をつくるには身体を動かす」べきと書いてありました。なんと「やる気がなくても軽い運動を2分やると、脳内にエンドカンナビノイドが分泌されて、やる気回路が動き出す。」そうです! 「やる気は「待つ」ものではなく自分で身体を動かして「つくる」もの。」……うーん、いいですね!
「EXERCISE 02 アスリートのように「一瞬で集中する」技術」には、「たった1回の運動でも注意力・集中力がアップする」という美味しい話も。
 さらに「EXERCISE 05 「至高の脳機能」を引き出すフィジカルフィットネス」では、作業記憶を高めるトレーニングの具体的な方法とともに、「脳の遂行機能を高めるうえで、科学的にいちばん繰り返し確立されている運動は、有酸素運動と筋トレ」だと書いてありました。
「現時点で脳にもっともいいと言える運動」は、次のようなものだそうです。
1)1回あたり30分前後を目指す
2)中程度以上(女性は軽度でも)
3)週2回以上を目指す(週1回なら45分以上を目指す)
4)4週間以上継続する
5)鍛えたい脳の働きによっては短い運動でもいい
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 また運動は、頭の知的能力を向上させるだけでなく、心にも効くようです。
「EXERCISE 06 アスリートのように俯瞰し、チーム力を高める」には、「運動は人の痛みがわかるミラーニューロンを鍛えるので、IQ(知能指数)だけでなくEQ(心の知能指数)も育てる」とありましたし、「EXERCISE 07 身体を動かし、揺るがない心をつくる」には、「気分の落ち込みは運動で予防でき、すでに気分が落ち込んでいるときも運動で改善する」ことが書いてありました。それはいいですね☆
 もちろん各章の最後では、その章のテーマの運動【やる気を出すエクササイズ】ステップ・ワークアウト・バリエーション、【集中力を高めるエクササイズ】ショートインターバル・スイッチなどが、イラスト付きで具体的に説明されています。
 ……この物語の主人公がトライさせられるのがトライアスロンなので、物凄く厳しいエクササイズなのかと思いきや、各章で紹介されるエクササイズは、軽度から中程度の強度のエクササイズばかりでした。これなら一般の人にも実行可能だと思います。
 が……割と「道具を使うもの」や「広い場所が必要になるもの」が多い感じだったので、自重筋トレみたいな「道具を使わない」もので、「狭い場所でもできる」ものだと、もっと良かったのになーと少し残念に感じました。
 それでも「現時点で脳にもっともいいと言える運動」など、各運動の内容を見る限りは、私自身がすでにほぼ毎日やっている30分の有酸素運動(エクササイズ)で代替可能のように思えたので、ちょっと安心しました。
 この本は、運動がなぜ脳にいいかを科学的に教えてくれるだけでなく、いろいろな役に立つアドバイスをたくさんくれます。そのごく一部を紹介すると、次の通りです。
「運動意欲のアップ方法」
1)目標を設定する
2)成果をモニターする
3)グループで運動する
4)やる気の出るフレーズを持つ
5)先立つ儀式を行う(ルーティン)
6)運動量を段階的に上げていく
7)インストラクターについて単発レッスン(ブートキャンプ))
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「アスリートやビジネスパーソンへの心理的アドバイス」
1)頭に空白を持ち、いつも学ぶ余地を持つ
2)過去を引きずらない
3)状況を柔軟に受け止め、動揺しない
4)つねにポジティブを探す(自分自身に話しかけるセルフトークは効果的)
5)外野の雑音は無視する
6)自分がやっていることを意識し、やりすぎない
7)理想の自分を視覚化する
8)自分をコントロールしようとせず、起ることに任せる
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『脳を最大限に活かす究極の運動法』を教えてくれる本でした。普段あまり運動をしていない方は、ぜひ読んでみてください。「運動」がいかに脳にも体にも心にも効果があるかがよく分かり、運動を習慣化したくなると思います☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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