『数の悪魔―算数・数学が楽しくなる12夜』2000/4/1
ハンス・マグヌス エンツェンスベルガー (著), 丘沢 静也 (翻訳)

 子どもの夢に出て来る「数の悪魔」が、数の不思議さを教えてくれる本です。
 「数」というと算数や数学を思い出して、「九九」の「七」の部分がなかなか覚えられなかったな、とか、計算結果が割り切れない値になると答えを間違っているんじゃないかとドキドキしたな、とか、すごくレベルの低いところでイヤ~な感じがしましたが(汗)、この本は、子どもの夢に出て来る悪魔が、「1や0の謎」など、「数」に関するの基本的な概念や不思議さを教えてくれる本で、悪魔なのに、意地悪い難しい計算をあまり強要してこないので、わりと安心して読み進むことが出来ます(笑)。
 でも悪魔が教えてくれるのは、1や0の謎、素数と無理数、フィボナッチ数、パスカルの三角形、無限と収束、ウソつきのパラドックスなど、子どもに教えるにしては意外なほど、すごく難しい話が多いので、この本を読むだけで「数学のことがすっかり分かった!」になるということは、残念ながらありません(汗)。特にパスカルの三角形の話は、それを利用すると「計算を楽に出来るようになる」のは分かったのに、その中で「偶数の数みんな」や「5で割れる数みんな」を探すと逆三角形になっている、ということの不思議さに、えっ、どうして???と頭の中に疑問が渦巻きました(汗)。(その疑問への回答は、残念ながら本の中にはありませんでしたが……)
 えーと、さて内容の一部を紹介しましょう。
 この本の第一夜は「1の不思議」。
 悪魔は「数はじつに簡単だ」と言います。最初に必要なのはただひとつ。1という数だけ。1さえあれば、ほとんどのことができる。大きい数だって、「1+1+1……」のように考えていけばいい。そして数ははてしなく無限にあるのだ、と言うのです。
 すると子供は、「それってどうやってわかるわけ。たしかめてみたの?」と聞きます。
 悪魔は、「いや、たしかめちゃいない。まず第一に、そうするには時間がかかりすぎる。第二に、それは余計なことだ」
 ……こんな説明じゃ、納得いきませんよね。すると子供は言います。
「最後まで数えられるなら、無限じゃないよね。無限じゃなければ、はてしなく数えることはできないし」
 そう! その通り!と思わず子供に拍手したい気分になりました(笑)。
 でも、悪魔は言うのです。「たとえば無限にあるガムを最後まで数えたところで、またポケットからガムを1枚取り出す。すると(これまでのガム+1)になり、さらに大きな数になる。わかったかね、ガムの数を数える必要なんてない。どうだ簡単だろ。これで十分だろう」
 うーーん。確かに……昔、数学の授業でそう習ったことを思い出しました……。そして数学の授業の時は、あまり納得できないまま、そんなものなんだな、で終わらせていたのですが(汗)、こんな風にガムで喩えられると、ちょっと納得できます。たしかに「時間がかかりすぎ」て「無駄なこと」だから、「無限」はとにかく「無限」なんですね(笑)。
 悪魔は、こんな具合に、「数」の基本概念や不思議さについて、分かりやすく楽しく教えてくれます。へーそうなんだ☆と、「数」への興味をかきたてられます。
 算数や数学がとにかく大嫌い!というお子さんが、これを読むと、魔法のように数学好きになる……なんて効果までは期待できませんが(汗)、算数や数学は苦手なんだけど、出来れば好きになって勉強できるようになりたい、と内心で思っている方になら、たぶん役に立つ本だと思います。これを読むと、少なくとも「数」へのアレルギーは、なくなりそうな気がします☆
 本が絵本風なので、子供向けのようですが、素数やフィボナッチ数などの話が出てきますので、小学校低学年以下の小さいお子さん向きではないと思います。多分、中学生や高校生の方が読むと、一番役に立つのではないでしょうか。「10歳から100歳までの子供のための、数のレッスン」だそうです。
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