『美篶堂とつくる美しい手製本: 本づくりの教科書 12のレッスン』2016/1/15
本づくり協会 (監修), 美篶堂 (編集)

 美しい手製本の作り方を教えてくれる「本づくりの教科書」です。
 基本の角背上製本、革装スケッチブック、コーネル装、活版印刷などの作り方を、写真で丁寧に教えてくれます。
 美篶堂(みすずどう)というのは、長野・美篶に製本工場を、東京・飯田橋の「本づくりハウス」内にショップを営む手製本の会社で、この本は、美篶堂の「本づくり学校」の授業が元になっています。
「手製本」というので、家庭でも簡単にできる本づくりなのかと思いきや……専門の道具を使ったかなり本格的な製本を学べるものだったので驚きました。というのも、「本づくり学校」はプロフェッショナルな講師の方たちが、1、2年かけて教えてくれる本格的なものだからです。……素人が家庭で、身近な文房具だけで作ることが出来るような本ではなく、書店で売られている素敵な装丁の本ばかりでした(箱入りのものもあります)。
 それでも、製本の基本から写真で詳しく教えてくれるので、この技術を応用して、もっと簡易な構造の本を作ることも可能なように思えました。本づくりに興味があるなら、プロの技術を詳しく知っておくのは決して無駄にはなりませんよね☆

 この本は、まず「授業の前に」として、「本の部位(構造)」、「本づくりの材料」、「本づくりの道具(一般的な道具から専門的なものまで)」の写真つき解説があります。
 次に「基本の動作」として、「紙を見る(紙の表裏、紙の目)」、「切る」、「折る(1枚ずつ、複数枚一気に)」、「測る」、「糊を練る」、「糊を塗る」、「くるむ(表紙のくるみ方)」があり、これもすべて職人さんの作業の手元写真つきで解説してもらえます。この技術は、ペーパークラフトをするときにも、参考になりそうなものが多かったと思います。
 例えば「紙の表裏」の判別方法は、次の通りです。
「紙は、表から切るのが基本。そのため、裏にはバリ(断裁時に縁にでる突起)がある。これを指で確認し、表裏を見分ける。表裏で質感の異なるものは、目視で見分けることが可能。ゆるやかに折って表裏を並べるとわかりやすい。」
 また、本づくりでは、「紙の目が背の天地と平行に流れるようにします。逆目では、作業しづらく、壊れやすい本になってしまうためです。」とのことで、「目」を見るには、紙を軽く曲げてみたときに抵抗が弱い方が順目だそうです。
 そして、次の12のレッスンに続きます(このレッスンも、製造過程を写真で教えてもらえます)。
1)角背上製本
2)糸かがり本
3)革装のスケッチブック
4)コーネル装
5)和製本 こうき綴じ
6)夫婦箱
7)窓あきの丸背上製本
8)ブックケース
9)10冊同時につくる角背上製本
10)活版印刷
11)クライスターパピア(ヨーロッパの伝統的紙染めの技法。糊染め)
12)編集とデザイン
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 巻末には「本づくりの材料・道具が買えるお店」も掲載されていました。東京・大阪・京都・愛知のお店だけでしたが、オンラインショップを行っているお店もあるようです。
 自宅で簡単に作れそうな製本ではありませんでしたが(もしかしたら和装本ぐらいは作れるかも?)、プロの技法を知ることが出来て、とても良かったと思います。本づくりに興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
(2021.01現在、価格が高騰しているようですが、この本は「定価2700円+税」です。ご参考までに)
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