『自分のアタマで「深く考える」技術 (PHP文庫)』2014/4/3
小川 仁志 (著)

 哲学者の小川さんが、自ら使っている、次のような思考術を教えてくれる本です。
・物事を「流れ」の中でとらえる
・「抽象化」して本質をうかびあがらせる
・「連続性」と「断絶」に注目する
・帰納法と演繹法を同時に使う
・「弁証法」で矛盾を乗り越える
 などなど全部で59の思考術が紹介されていました。これらは哲学やビジネスでよく使われている思考法なので、先輩に「考えが浅い。もっとよく考えて」と言われても、どうしていいのか途方にくれてしまうような新入社員の方などには、とても参考になるのではないでしょうか。
 ただ……全体としては、よくある自己啓発書や仕事術の本で紹介されることが多い思考術がほとんどだったと感じたので、中堅社員以上の方にとっては、なーんだ「深く考える技術」ってほどでもないな……と期待はずれかもしれません。それでも、迷える新入社員の方から「どのように考えればいいんでしょう?」と相談されたときに、アドバイスするためのヒントを見つけることができると思います。
 例えば「第1章 まず「基本的な思考パターン」をおさえる」の「ビジュアル化する」という技術。「頭の中にある要素をマップに落とす作業、マッピングを行う。グループごとの関係図を描いてみてもいい。対立軸を設定すると分かりやすい。」
 ……この「頭で考えたことを紙の上に描き出してみる」、私もよく行っています。考えを整理する上ですごく役に立つ技術だと思います。
 また「第3章 物事の「本質を見抜く力」をつける」では、まず先入観を、次の「四つの先入観(イドラ)」のパターンに当てはめて取り除くと良いそうです。
1)種族のイドラ:感情や感覚によって知性が惑わされてしまう
2)洞窟のイドラ:物事を自分に都合のいいように解釈してしまう
3)市場のイドラ:公の場で耳にした言葉をうのみにしてしまう
4)劇場のイドラ:権威あるものをそのまま受け入れてしまう
 この四つの先入観を排除する必要性を説いたのは、イギリスの哲学者フランシス=ベーコンさんだそうですが、単純に「先入観」を取り除けと言われるよりも、このような4パターンを提示されて考える方が、より具体的にイメージしやすいと思いました。
 また「インテリジェンス」に関して、「単なる情報としてのインフォメーションを集積し、これを英知まで高めて活用するインテリジェンスという考え方が注目されている。」「インテリジェンスとは、ラテン語を語源とする語で「行間を読む」という意味でもあるらしい。」という話は、とても参考になりました。なるほど、インテリジェンスは「行間を読む力」か……すごく腑に落ちました。インテリジェンス、私自身も高めていきたいと願っています。
 こんな風に、哲学者の思考方法を中心に、自己啓発書やビジネス書で紹介されている「思考技術」を総合的に教えてもらえる本でした。「自分の頭で考えることにまだ慣れていない」迷える新社会人の方は、ぜひ読んでみてください。
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