『地形図を読む技術<新装版> すべての国土を正確に描いた基本図を活用する極意』2018/8/17
山岡 光治 (著)

国土地理院がつくる2万5千分の1地形図は、わが国の様子を、土地の高低もふくめて正確に表した地図で、すべての民間の地図のもとになる地図なのだそうです。等高線も描かれていて、すごく複雑そうに見えるこの「地形図」の読み方や楽しみ方を、詳しく教えてくれる本です。
実を言うとちょっと方向音痴で、うろ覚えの記憶を頼りに歩くと高確率で道に迷います(汗)。そのコンプレックスもあって、「地図を読む」能力を高めたいなと考え、この本を手に取ったところ……最初の記事、「1-1 地図で現地の風景がわかる?」の「クワガタの森はどこにあるか」に、まず驚かされました。「地形図」をうまく読み取るだけで、クワガタがいる森を、高確率で探せるのだとか! なぜなら地形図には、針葉樹、広葉樹などの植生記号や、田畑といった農耕地などの記号がきちんと記されているからなのだそうです。そして地形図でクワガタがいる森を探すには、水流が近い里山の南斜面で、広葉樹の記号が複数配置された森を探すといいののだそうです。……へえー、そーなんだ。地形図って、凄い☆
こんなふうに、地形図をじっくり読むと、いろいろなことが読み取れるようです。
この本の「第2章 地形図から多彩な情報を読み取る技術」では、実際に地形図を持って、神奈川県の「秋谷」集落などを歩いてみたことが、地図や写真で具体的に紹介されています。地形図の学び方・楽しみ方としては、実際に現地を訪ねる前に、地形図で机上散歩をして、地形図上の記号などの疑問点をいくつか見つけてから現地にでかけ、実際の風景と対比してみると面白いようです。……なんだか、けっこう大変そうな気もしますが(汗)、地図を読む学習をするためには、すごく役に立ちそうですね! もしかしたら、普通の観光旅行より、むしろ楽しめそう(笑)。
すごく興味深かったのが、「第4章 地形図から現地の風景に思いをはせる技術」。
「4-2 河川を読む」で紹介されていた滋賀県の旧草津川は、天井川(河川流路へ砂礫などの堆積が進行したことで、河床面が周辺地盤より高くなった河川)で有名ですが、地図で見るとこんな感じなんですか。私も実際に現地を訪れたことがありますが、本当に、旧草津川の下を、国道と鉄道がトンネルで通過していました(笑)。その場所の旧草津川には水はまったく流れていなくて、「土手」状態なのですが、土手のすぐ下には川がないので、ここが天井川だという知識がないと、なんのための土手なのかも分からないほどの不思議な光景です。そして旧草津川が果たしていた川としての役割はどうなったのかというと、「2002年には旧草津川の南に水路(現在の草津川)が建設されたのです。分水路といったものではなく、新しい河川の建設です。」のだとか。この「旧草津川」は、自然(川+砂礫堆積)と人間(堤防)の共同製作(というか攻防の末の人間の敗北?)の歴史を物語る景観として、このまま残して欲しいと願っています。
この他にも、埼玉県の川越藩士による三富開発や、栃木・群馬・埼玉・茨城の県境の渡良瀬遊水地などの記事も、現地の状況を知っているだけに、すごく興味深く読みました。地形図って、本当に面白いですね☆ ……というか、これだけの情報を掲載するための努力を思うと……国土地理院の「地形図」って、本当にありがたいものだと痛感させられました。
この他にも、自分の家のあるあたりが洪水などの災害時に危険じゃないかを、どう読み解くかとか、過去の地図との比較で何が分かるか、など興味深い記事が満載です。地図に興味がある方は、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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