『NHKスペシャル 人体 神秘の巨大ネットワーク 第1巻:【プロローグ】神秘の巨大ネットワーク【第1集】“腎臓”が寿命を決める』2017/12/29
NHKスペシャル「人体」取材班 (編集)

NHKで2017年9月から放送された番組「人体 神秘の巨大ネットワーク」を書籍化した本の第1巻(全4巻)です。第1巻には、「【プロローグ】神秘の巨大ネットワーク」と「【第1集】“腎臓”が寿命を決める」が収録されています。
これまで、人体のイメージと言えば、「脳が全体の司令塔となり、他の臓器はそれに従う」というものが主流でしたが、最近の医学界では、これまでの「人体観」を覆す、巨大なパラダイムシフトが起こりつつあるそうです。実は、「体中の臓器が互いに情報を直接やりとりすることで、私たちの体は成り立っている」のだとか。このいわば「臓器同士の会話」を知ることで、いま医療の世界に大革命が起きていて、例えば、がんや認知症、メタボなどの悩ましい病気対策にも画期的な方法が見いだされているそうです。この本は、そんな新たな医学の潮流の全貌を、豊富な写真とともに紹介してくれます。

「【プロローグ】神秘の巨大ネットワーク」では、このシリーズ全体を概括しています。
ここでは最先端の生体イメージング技術の進化の一つ、格子光シート顕微鏡で撮影した画像に驚かされました。なんと「免疫細胞が、がん細胞を攻撃しようと食らいつく瞬間」の鮮明な画像が掲載されているのです。
「格子光シート顕微鏡では、ミクロの細胞を丸ごとスキャンし、1秒間に数百枚の断面像を撮影する。それらの断面像をコンピュータ上で再構築することで、細胞の中の構造まで立体的に観察できる。」「格子光シート顕微鏡では、立体的に再構築された細胞の姿を、好きな角度から、その中身までも透かして見ることが可能だ。」
このような科学技術の進歩により、人体の各臓器が互いにメッセージ物質を送り合って「会話」していることが明らかになり、「人体の真の姿は、巨大なネットワークだ」ということが分かってきたそうです。
そして第一回の主役はなんと「腎臓」。「【第1集】“腎臓”が寿命を決める」では、一見かなり地味な「腎臓」が果たしている大切な機能が詳しく紹介されます。「腎臓は尿をつくるだけではなく、血液中の成分を調節する(きれいな血液を作る)という重要な役割を担っている。」のだそうです。腎臓は、不要な老廃物を排泄するだけでなく、「酸素が欲しい」という腎臓からの訴えを他の臓器に伝えるメッセージ物質EPOを出すことで、骨髄での赤血球の増産を促し、体の隅々まで酸素が行き渡らせているのだとか。……腎臓って凄い☆
この本は「人体」で何が起こっているかを、細胞などの鮮明な画像やイラストで「リアルに見せて」くれます。これらの科学技術の進歩により、これからの医学(治療技術)もどんどん進歩していくことが期待できそうで、わくわくさせられます。
ただし「健康を保つためには何が必要か」のようなノウハウを重視している本ではないので、この本を読んでも、自分の健康のために何をすべきかの参考にはあまりならなかったことが、ちょっと残念でもありました(汗)。とりあえず個人的には、「人体は全体としてネットワークを構成しているので、どこかに不具合が起こったときにはその部分(臓器)だけではなく、全体を考慮しなければならない」ことと、「薬なども最終的には腎臓で処理されるので、不要な薬を飲まないよう心掛ける(腎臓が弱り過ぎている時には、腎臓への負担を軽減するために病気の治療に必要な薬も飲むのを中止した方がいい場合もあるそうです)」ことに留意しよう、と思いました。
とても興味深い本でした。ぜひ読んでみてください。