『「紙」の大研究〈1〉紙の歴史』2004/4
丸尾 敏雄 (監修), 樋口 清美

紙について、その歴史や日本との関わりなどを分かりやすく解説してくれる本です。「「紙」の大研究」の1冊目で、「和紙の作り方」や「洋紙の作り方(抄紙機)」についても、製造工程を豊富な写真で説明してくれます。
まず驚かされたのが、世界最古の紙と言われる古代の紙切れ・放馬灘紙(ほうばたんし)の写真。1986年に中国の古いお墓から見つかったものだそうですが、何か地図のような線が描かれているのが、はっきり見てとれます。2200年くらい前のものと考えられているようですが……中国ではこんなに古い時代から「紙」が作られ、使われていたんですね!
このような古い紙きれが発見されるまで、紙の発明者と考えられてきたこともあった蔡倫さんは、現在では紙の改良者と考えられているようです。そして蔡倫さんの紙の改良ポイントは、「紙の原料になるものを灰汁(アルカリ溶液)につけて煮たところにある。灰汁で原料を煮ることにより、よぶんなものや色をとりのぞくことができた。」そうです。
日本には中国から紙の製法が伝わったのですが、紙の原料やネリ(粘液)、漉き方を工夫することで独自の進化をとげました。オランダの有名な画家のレンブラントさんも、日本の和紙を美術品に使っていたそうです。
「レンブラントがはじめて見た日本の紙は、絵画用に入ってきた紙ではなく、日本の漆器をつつんでいた紙だった。その紙が丈夫で美しいことにひかれて、レンブラントは和紙を注文した。「光の画家」といわれるレンブラントは、作品の中で光と影をみごとに演出している。油絵のほか、たくさんの銅版画(エッチング)やスケッチものこしているが、そこには多くの和紙が使われていた。版画は刷る紙によって雰囲気が違ったものになる。レンブラントは世界中の紙を手に入れてためしてみたが、和紙ほどしっくりとレンブラントらしさを再現してくれるものはなかった。和紙に刷られた版画は評判となって高値がつけられた。」
……漆器の「包み紙」でさえ、外国の人に「優れたもの」と思われたのですね。1613年に伊達正宗がヨーロッパに送り出した使節団が使い捨てにした「鼻紙」が上品で美しいことにも、ヨーロッパの人は驚いたようです(ローマの民族博物館に展示されていたことがあるほどです)。
この本は、紙について、「歴史や日本との関わり」などを中心に、紙の作り方まで含めて紙の概要を解説してくれます。お子さんも読んでくれることを期待しているのか、文字には「よみがな」がついていて、ページ数も55ページと薄い本ですが、内容はかなり充実しているので、大人が読んでも読み応えがあります。2800円+税と、値段がわりと高価なのが残念ですが、立派で丈夫な装丁で作られているので、大勢の人々に図書館で読んでもらうことを想定しているのかもしれません。興味のある方は、ぜひ読んでみてください☆