『ブラタモリ (1) 長崎 金沢 鎌倉』2016/7/29
NHK「ブラタモリ」制作班 (著, 監修)

NHKの人気の旅行番組「ブラタモリ」を書籍化した本で、すでにシリーズとして多数の本が発売されています。この番組、とても面白いので、私も毎回、すごく楽しみにして見ています。この『ブラタモリ (1) 長崎 金沢 鎌倉』はその一冊目。2015年度放送の第1回から第6回の長崎、金沢、鎌倉での内容が収録されています。
「長崎」か……私も行ったことあるなー、素敵なところだった。坂は多かったけど……、と懐かしく思いながらTVの番組を見ていると、案の定、人気の観光地「グラバー園」への坂道から始まりました。うーん、やっぱり長崎といったら「とにかく坂道」だよなーと、あの時の苦労を思い出しましたが、なんとタモリさんは「坂」が大好きなようで、「高低差がないところには何の興味もない」と言い切って、「ダンサー(段差)」を自称しているそうです(笑)。
すごく興味深かったのは、「ドンドン坂」の側溝。坂の上の方は石をくり抜いてつくられたU字溝で、坂の下の方は三角形の三角溝になっています。これは、下に行くほど水量が多くなることに対応し、流れる水の速さを調節するための工夫なのだとか……うわー、そうだったんだ。さすが坂の町・長崎。ゴミ収集方法にも、坂道ならではの工夫がありました。
ところが……坂を上った先にあるはずの人気の「グラバー園」の方は素通り! な、なんだと? しかも、その次の「出島」も素通り! なんだ、この旅番組は……と半分呆れながらも、こんな旅もあるんだ! と衝撃を受けました。有名な観光地に行って、素晴らしい(珍しい)風景を眺めて写真を撮り、人が大勢いるなかで看板に何か説明書があるのを読んで、ふーん、そうだったのーと新しい知識を得て(すぐに忘れ)、地元の名産品を食べる……だけの旅行なんか面白くないかもとまで、思わされてしまいました(笑)。

次の回の「金沢」も同じように、「兼六園」「金沢城」「金沢21世紀美術館」「香林坊」といった「金沢の定番」に、ただ行くのではありません。一応、「兼六園」には行くのですが、美しい園内を散策することなく、園内の「辰巳用水」の石管を眺めます。私も「兼六園」に行ったことがあったけど、そんなものが地味に存在していたんですね……。ここでは「辰巳用水」の巧みな仕組みが主役で、「金沢城」の方も、城ではなく「石垣」が主役なのでした(笑)。
ちなみに金沢という名前の由来は、「砂金」なんだとか! 知りませんでした。金沢は、その昔、川筋の鉱脈から砂金を含む土砂が流れてできた土地で、それが「金の沢」「金沢」になったといわれているそうです。なんてゴージャスな土地なんだ。どうりで古くから金箔作りや、金細工が盛んだったわけですね。
最後は「鎌倉」。鎌倉は三方から山が迫り平地が少ないという地形の弱点を、武士たちが岩盤(鎌倉石)を削って山を切り拓いて町を広げることで克服していったことが、実際にその痕跡が残る場所を眺めながら明かされていきます。鎌倉って、神社や寺巡りだけの場所じゃなかったんですね……奥が深い(笑)。
鎌倉の南の方はすぐに海になっていますが、鶴岡八幡宮から由比ヶ浜まで一直線に伸びる若宮大路にある「一の鳥居」は、実は由比ヶ浜砂丘の頂上で、鎌倉時代には、この場所を境にして海側が「前浜」、八幡宮側が都市域だったそうです。
また鎌倉には、現存する日本最古の築港跡「和賀江嶋」があるのですが、港の造営に使われたのは、波にもろい凝灰岩の鎌倉石ではなく、丹沢や伊豆・箱根あたりから運ばれた硬い石だったのだとか。その他、歌川広重の浮世絵「相州江のしま詣の図 七里ヶ浜真景」に描かれた砂浜は、黒い砂と白い砂が縞模様になっているのですが、その黒い砂は「砂鉄」。鎌倉は、鎌倉時代から鍛冶産業が盛んだったそうですが、その前提となったのは、この砂鉄の存在だったと考えられているそうです。なるほど……広重は、本当に七里ヶ浜で「写生」して描いていたのかも……浮世絵の見方まで変わりそう(笑)。
……というように、自分が旅行したはずの「有名観光地」でも、まったく新しい視点から見せてくれる、すごく斬新な旅番組でした。本の方には、ここで紹介した以外にも興味深い情報が満載☆ もちろん「有名観光地」めぐりのための、普通の観光ガイド的な情報も、「地図」とともに各回の終りに表示してありますので、旅行ガイドブックとしても使えると思います。すでにシリーズとしてたくさん本が出ていますが、一冊一冊を独立に楽しめますので、「自分が特に気になった回」だけでも、読んでみてはいかがでしょうか(もちろん全シリーズでもOK)。