『プレジデント・クラブ―元大統領だけの秘密組織』2013/2
ナンシー ギブス (著), マイケル ダフィー (著), Nancy Gibbs (原著), & 2 その他

歴代アメリカ大統領たちの結びつきを描いたノンフィクションです。
偉大なる経験者と、未熟な最高権力者の友情、駆け引き、争い、罠。プライドを捨てて国を守るか、あくまで名誉にこだわるか……様々な思惑が渦巻きつつも、歴代大統領たちは、党派を越えてつながっていたことが描かれています。
ところで、「世界一の権力者」という言葉で連想されるのは、やはり「アメリカ合衆国大統領」だと思いますが、それだけに、その重責はとても大きく、彼の立場や感情を真に理解できるのは、かつて同じ重責を担ってきた歴代の大統領たちだけなのでしょう。
この本を読むと、巨大な権力の頂点に立つものの孤独や葛藤がよく理解できるとともに、アメリカの歴史や世界情勢を、大統領の立場から見つめ直すことができます。
ジョン・F・ケネディの次の言葉は、大統領の気持ちを端的に表しているようです。
「どのような経験の持ち主であっても、じゅうぶんに準備を整えてから大統領の地位に就くことなどありえない」
「単に助言をしたり議論したり法律を作ったりする人間と……最終的に判断を下さなければならない人間とのあいだには……途方もない差があるものだ。……顧問の意見は分かれることがよくある。間違った道を選んでしまった場合――私もときおり選んでしまうのだが――大統領は当然ながら重い責任を負うことになる。だが、顧問は次の問題へと移ることができるのだ」
この本を読むと、大統領選で戦って敗れた元大統領でも、違う政党の元大統領でも、ほぼ例外なく新大統領に誠実に助言し、励まし、時には行動で支えてきた(まれに邪魔してきたこともあるようですが……)ことがよく分かり、感動しました。日本の首相にもこのような政党を超えた首相クラブがあってもいいのにな……とちょっと思いましたが、日本の場合は、あまり必要ないのかもしれません。というのも「大統領」と「首相」はちょっと立場が違うからです。
日本の「首相」は「大統領」と違って、与党のなかから選ばれるので、自分の身近に助言を与えたり励ましてくれたりする人は大勢います。それに対して「大統領」は、同じ党の最有力者とも争った上で勝利を獲得しなければならないので、どうしても選挙戦で相手を大衆の面前で攻撃することになり、同じ党内の人間同士でも精神的しこりが残ってしまうという困難がつきまとっているようです。
「大統領」はまさに民衆に選ばれた「強大な権力を持つ王様」なんだなあ、と感じました。そして、この制度は、実は、複雑で困難な問題を抱えた政治構造なのでは?とも思ってしまいました。
そういう事情もあるのだと思いますが、孤高な大統領の抱く複雑な感情を本当に理解し、支えられるのは、同じ大統領職を経験した人だけ……プレジデント・クラブはこれまでも素晴らしい役割を果たしてきたし、今後も果たし続けていくのでしょう。かつては敵同士として選挙戦を戦った有力政治家たちが、いろんな思惑(必ずしも美しいばかりではない思惑)を抱きつつも、アメリカのために現職(新しい)大統領を支えていく姿は感動的で、やはり彼らは超一流の人間たちだったのだなと再確認させられました。
700ページ以上あって読むのはけっこう大変ですが、政治や社会情勢に興味のある方にとってはもちろんのこと、会社を経営している方など困難な判断を求められる方にも、とても参考になる本だと思います。