『不可能を可能にするビジネスの教科書 星野リゾート×和田中学』2011/3/12
藤原 和博 (著)

ホテルでも学校でも、「お客様の期待を超える」ことが、リピーターを増やす大原則であることを教えてくれる本。経営に行き詰ったリゾートホテル「リゾナーレ」を再生させて注目されている星野リゾートの星野さんと、杉並区学力調査でビリから3番目だった和田中学校の学力を飛躍的に向上させ、人気中学へと変えた藤原さんが、「不可能を可能にするビジネスの方法」へのヒントを与えてくれます。
個人的に最も参考になったのは、「不可能を可能にする会社や組織の共通点」としてあげられた次の10点でした。
1)ストロークを多くする(リズムとテンポを重視して、報連相のスピードを上げ、修正主義でことを運ぶ)
2)フラットな組織(ポジションに関係なく議論できる)
3)社会貢献的な要素を打ち出す(自分の仕事に誇りをもつ)
4)遊びの要素、学びの要素を強くする(仕事の自己実現感覚が増す)
5)合理主義を突く(「正解」ではなく「納得解」を)
6)情報の徹底的な共有(パートやアルバイトに至るまで)
7)資格ではなく、意思によって任せる
8)一人一人の動機づけをサボらない
9)ビジョンを共有する強い組織は、必ずある種の「宗教性」を持つ(ビジョンを共有できなければ組織は崩れる)
10)シンボルをマネジメントする

また、東京初の民間中学校長として就任した藤原さんが行った「改革の具体例」も、とても参考になりました。たとえば、「成績上位の子のための英語特別コースを設置」したこと。当然のように「成績上位だけを特別扱いするなんて!」と非難ごうごうだったようですが、このコースで力をつけた生徒たちが自主的に他の子たちを教え始めて、全体の成績アップにつながっていったようです。また続いて、「成績がふるわない生徒に、土曜日の午前中に補修を行う「土曜寺子屋」の設置」も行って小学校の復習もさせたことで、学力はぐんぐん上昇していったのだとか。
この「成績上位の子のための英語特別コースを設置」を行おうと決断したこと自体が凄いと思います。なぜなら保護者たちから「特別扱い」への非難が起こることは容易に予想できたはずだから……それでも「実行すれば、きっと良い効果がある」と確信できることを断行するところに「不可能を可能にする」一番の秘訣があるのだな、と思わされました。
その他にも、「学校の中に「地域本部」を作り、市民に参加してもらった」など、手本にしたくなる改革例を、具体的に教えてもらえます。
すごく参考になる本だったのですが、残念ながら『ビジネスの教科書』といえるほど体系だったものではありませんでした。前半は、星野リゾートと和田中学校での改革事例の紹介で、後半は、彼らが現在懸念している問題の解決案や今後への提言という構成で、そこから「不可能を可能にするための姿勢やヒントを読者が自ら読み解く」、という感じの本なので、「何かを『教科書』で教えてもらう」ことを期待して本を読んだ方は、ピント外れだと失望するのではないかと思います。特に後半は、「これが教科書?」と頭を傾げたくなる内容でしたが、これらは彼ら自身が抱えている問題を解決するための「不可能を可能にするための地ならし」のために記述されているものなので、「不可能を可能にする」ためには、「読みたくなるようなタイトルの本」の一部に、自らの問題解決(と日本を良くすること)に役立つと彼らが考えている部分をちゃっかり入れてしまう方法もある、と考えることも出来るでしょう(これ自体が「不可能を可能にする」方法の実例の一つとして)。
『教科書』と呼べるほど体系だった内容でなかったことは少し残念でしたが、全体としては、すごく参考になることが多かったように思います。ぜひ読んでみてください。