『東京モダン建築さんぽ』2017/9/17
倉方 俊輔 (著)、下村 しのぶ (写真)

元祖タワマン、昭和最先端ワンルーム、宇宙船のような丸窓、職人技が光るタイル……昭和レトロな東京の名建築48選を紹介してくれる本です。
昭和の高度成長期に建てられた「当時最先端」の建築たちが放つ昭和レトロ感を、フルカラー写真(外観&内装)とともに解説してくれます。嬉しいことに所在地(地図)での案内もあるので、東京に行ったときに気軽に立ち寄る(「建築さんぽ」する)ことも出来ます。
さて、元祖タワマンというのは、隅田川沿いの「カーサ相生」という建物で、1973年に建てられた超高層分譲住宅(15階建て)。現在では「15階建て」は超高層ではありませんが、当時はもちろん超高層。「どーだ、東京だ!」って感じの建物だったのでしょう(ワンルーム・マンション)。外壁のオレンジの花タイルが可愛くて、2017年の現在でも、なかなか素敵です。
個人的に嬉しかったのは、新橋の「静岡新聞・静岡放送 東京支社ビル」。円柱状の建物に四角い翼が生えているような不思議な形の焦茶色の建物で、見るたびに「不思議な形の建物だなー、何なんだろう?」と思いつつも、そのままにしていた(笑)謎の建物だったのですが、ようやく正体が分かりました(というか、建物の上に名前が大きく書いてあったのですね……)。
美しいと思ったのは、丸の内の「三菱地所のビル群」。古そうなのに重厚感があって美しいなーと通るたびに感じてはいたのですが、こうして写真で見ても、やっぱり美しかったです。
また「日本生命日比谷ビル 日生劇場」の内部は、すごくアントニオ・ガウディっぽい感じなのに驚きました。日本にこんな建物があったのですね。洞窟みたいに壁面がうねっています。螺旋階段の形も面白い。
そして「目黒総合庁舎」って、こんなに素敵な建物だったんですか。1966年建築なのに、美しい和モダンを保っていて、とても素晴らしい。
そして回転しそうに見える新宿の「安与ビル」。八角形のビルの形も面白いのですが、内部の美しい茶室との印象のギャップが凄い……と思うのに、なぜか、もう一度眺めると、両方が美しく調和していることを感じずにいられません。奇抜に見える外観ですが、すべてが一貫して「ピンと張り詰めた線」で構成されていて、内側の茶室の障子の線と響き合っているからでしょうか?
さらに「東京文化会館」の大ホール。ホール内壁面の反響版の形がすごいなと思っていたのですが、なんとこれは「爆発寸前の火山の噴火口で、地割れが起こり、亀裂から火が見えるイメージ」という建築家からの依頼で、彫刻家の向井良吉さんが作ったものだそうです。大ホールを何故そんなイメージにしたかったのかは謎ですが、「芸術は爆発だ!」ってことなのでしょうか(笑)。
こんな感じの「へえー」情報と写真が満載。建築愛にあふれる美しい写真(実物より「美人」に写っている気もしますが……)を眺めていると、これらの建築物がいつまでもこのまま残って欲しいなーと思ってしまいます。……でもまあ、個人的には、「実際に人の住む(使う)建築物は、暮らしやすくてこそ美しいもの」とも思っているので、古い建物が建て替えられて全く別な顔で新しくなっても、それもまた良いことだと思いますが。
昭和レトロな美しい建物群の写真集です。写真が充実しているので、「物語の舞台設定」を考えるのにも役に立ちそうです。散歩のためのデータもついているので、気になる建物を実際に見に行くことも出来ると思います。