『ボートの三人男』2010/3/25
ジェローム・K. ジェローム (著), 丸谷 才一 (翻訳)

三人の英国紳士と一匹の犬が、気鬱をまぎらわすためにボートでテムズ河に漕ぎ出すことから始まる騒動と顛末を、ユーモアたっぷりに描いた作品です。
これぞ英国流ユーモアの真髄☆と、思わず膝を打ちたくなるような大傑作! 1889年に出版された古典的作品ですが、古いものほど価値が出る英国モノのせいか(?)、我々のアホな人間性が変わっていないせいか、今でも素晴らしく面白いです☆
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
三人(犬は勘定に入れません)は、テムズ河のボート旅をすることに決めるのですが、実際にボートに乗り込むまでにも、そうすることに決めた経緯やら準備の顛末やら、それから派生する「思い出したこと」など、抱腹絶倒もののトホホ話の連続で、なかなかテムズ河になりません(笑)。
例えば、ボート旅のプランを練っている最中に思い出す話の一つに、ポジャー伯父さんの「食堂の壁に絵の額縁を掛ける話」があるのですが、「わしに任せなさい」と言いながらも、結局は大騒ぎしてみんなを集めたあげく、どたばたの最中に自分の上着をぬいだ場所を忘れて、「六人もいるくせに、五分前におれがぬいだ上着をみつけることができないとは、まったくお前たちは……」とこぼし始めるという話に、その情景が目に見えるようで涙が出るほど笑ってしまいました。
こんなトホホ話が、どんどん続きます。どんだけ体に「笑」がたまっていたのさ? と、その途方もない埋蔵量に驚嘆してしまいます。何しろ笑いどころのないページが、ほとんどないんですから!
しかも驚くのは、「下ネタ」もほとんどないのです! 上品なネタだけではありませんが、英国紳士風傑作ユーモア話のオンパレード☆ 丸谷才一さんの訳がうまいせいもありますが、語り口も上品で、気持ちよく読み進められます。
また、ところどころで、急にテムズ河流域の町や森の美しい情景や、歴史などが美しい抒情的な表現で語られるのですが、そのギャップがまた楽しい……と思っていたら、解説に、もともと、この本はユーモア小説ではなく、歴史的・地理的な展望書として構想されていたと書いてあって……そうだったの?と、びっくり。(その部分、けっこう読み飛ばしていたことは秘密にしておこう……)。
こんな三人の紳士(と犬)のテムズ河旅が、愉快で滑稽でないはずもありません。しかも主人公のJは、ボートを漕ぎながら、思索にふける(その一部は、テムズ河流域の歴史的・地理的な抒情的描写)のですが、たいていは「ろくでもない」回想なので、読みながら、くすくす笑いがとまらなくなります。
この本はどこをめくっても面白いので、気分転換にはもちろんのこと、身体のトレーニングにも役に立ちます。ほぼ全ページで腹筋が鍛えられます(笑)。
読み終えた後、ああ、この本を読まずに死ぬなんていう人生の大損失をしなくて良かった……と心の底から思えた本でした。
英国の傑作ユーモア小説。これからもずーーーっと読みつづけられ、全世界を笑いで満たしてほしいと思います☆