『土偶界へようこそ――縄文の美の宇宙』2017/7/4
譽田 亜紀子 (著)

縄文時代に作られた人形(ひとがた)の焼き物・土偶の写真集です(笑)。さまざま角度から撮影したカラー写真と美しいデザインで、土偶の魅力を紹介してくれます(『中日新聞』『東京新聞』で連載された「土偶界へようこそ」をもとに、新編集されているそうです)。
さて、博物館などで土偶を見るとき、普通は「正面から」しか見ないと思いますが、この本では「側面」や「裏面」も見ることが出来ます。例えば表紙の土偶は、側面を見ると意外に平たくて、パンツはちゃんと裏面にも描かれているのです(笑)。なるほど、こんな格好をしていたんですね。
そんな感じで全70体の全国の土偶がカラー写真で紹介されていきます(それぞれ1ページ程度)。もちろん解説(?)もついているのですが、あまり学術的ではない「ゆるーい」感想程度のことが書いてあることも多くて、この本は全体的に、土偶の学術書というよりは、土偶の可愛さ・面白さを愛でることに重点が置かれているのです(笑)。もっとも土偶は縄文時代のものなので、学術的に分かっていることも少なそうですが……。

長野県茅野市の「縄文のビーナス」の写真ももちろんあります。国宝なんですね。ハート形の顔も可愛いし、とても美しい……というか面白くて魅力的な造形をしています。ところが、その次のページの土偶「掌にのる土偶」は、すごく原始的で素朴な造形。これも国宝の「縄文のビーナス」と同じ遺跡から出てきたそうですが……試作品? 息抜き? 子どものおもちゃ? あまりにもレベルが違っていて、なんだか楽しくなってしまいます。
ところで「土偶」と言われて、すぐに思い浮かぶのは、宇宙人みたいな青森県の遮光器土偶とか、インパクトのあるハート形の顔をした群馬県のハート形土偶だったのですが、なんと両方とも国宝じゃなかったんですね。国宝になっている土偶が少ないことにも驚きました。
また土偶の他に、凝灰岩を彫った「笑う岩偶」とか、シカ角から作られた「シカ角のお守り」も掲載されています。縄文時代のフィギュア(?)の素材は、粘土だけではなかったんですね。ポーズもいろいろで、立っている土偶だけでなく、座った姿勢の土偶もありました。同じような土偶が、遠い場所で発見されているものもあって、これは縄文時代(以降?)の交流を示しているのかもしれません。
本に登場する最初の土偶写真は、すごく素朴な形をした「トルソーのような土偶」なのですが、X線画像もあって、身体の中央に長さ2㎝ほどの空洞が写っているんです。これを見て、土偶ってどうやって作られたんだろう? といろんな妄想が湧いてきました。縄文時代だと焚火で魚などを焼くことも多かっただろうし、魚を木の枝に刺して焼くこともあっただろうなー……もしかしたら土偶も同じように、木の枝に刺して焚火で焼いて作ったのかも……この土偶の穴はそのための枝の跡かも……なーんて(笑)。
巻末には、「土偶界をより楽しむために」というタイトルで、土偶の解説もちょっぴりあります。それによると土偶と埴輪は違うそうで、土偶は縄文時代に、埴輪は古墳時代に作られたもの。用途も違っていて、土偶は祈りのためのもの、埴輪は古墳に埋葬された被葬者(支配者)のための副葬品なのだそうです。
とても興味深い土偶写真が満載の本でした。歴史(古代)に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。