『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史』2016/8/5
スティーブン・ジョンソン (著), 大田直子 (翻訳)

夏の氷や夜の照明の明かりなど、先人たちにとっての贅沢品が、現代を生きるわれわれにとって当たり前になるまで、どのような苦労があり、どんな奇跡が起きたのか……「発明」を切り口にした世界史(人類進化)の物語です。
テーマとしてとりあげられるのは、「ガラス」「冷たさ」「音」「清潔」「時間」「光」。
最初の「ガラス」の章から、あまりの面白さに時間を忘れて読みふけってしまいました。リビア砂漠で旅人がつまずいたガラス。それがいつしか眼鏡を生み出して読書や研究を促進させ、顕微鏡の発明で細菌が見いだされて医療が進展し、さらには鏡、テレビ、インターネットと、発明の連鎖を生み出していったそうです。なるほど、確かにガラスは「革命的な発見」だったのだなーと思わされました。
そして「冷たさ」。「ボストンの氷をカリブに運ぶ」ことを思いついた人が、氷の販売のために保存・移送方法を考え、それが肉や食料の保存に使われて……というように、最初はけっこう原始的な思いつきから始まって、それが新たな発見やニーズを生み、思わぬ方向へ広く展開していくという歴史的経緯が、いろいろな興味深い事実の積み重ねで紹介されていきます。
また下水道工事のために、シカゴの町を「ねじジャッキで持ち上げて」排水のための勾配をつけたというようなダイナミックな話もあって、本当に「どえらいこと」考える人がいるんだなーと興味津々な話の連続。
この本で著者が見せてくれたのは、不思議な影響の連鎖「ハチドリ効果」。ある分野のイノベーション(またはイノベーション群)が、最終的に、まるで違うように思われる領域に変化を引き起していくことが、6つの革命的発見(発明)の事例で紹介されます。
そしてその歴史を「ロングズーム」で見せてくれます。これは「鼓膜を震わす音波の振動から大衆の政治運動にいたるまで、さまざまなスケールで同時に検討することによって、歴史の変化を説明しようとする試み」だそうですが、最初の発見・発明が、いろんな人の関わりで、どんどん違った方向へ展開していく様子がすごく面白い上に、いまや「当たり前」のものに思える便利な暮らしは、少し前には「存在すらしなかった」ことに、あらためて衝撃を感じてしまいました(汗)。
この本は、特に若い人たちに読んで欲しいと思います。スマホなど便利な電化製品に溢れ、エアコンの効いた快適な室内で、自分の好きな時間に(夜でも)本が読める、冷蔵庫から新鮮な食材を出して食べられ、水を飲んで病気になることを恐れることもない……こんな「当たり前」の生活ができるのは、先人たちの努力があってだったということを思い出すためにも(汗……もちろん私自身も含めてですが)。
また、「快適さ」が少なかった時代に、人々がどんな工夫をしてきたかを知ることは、身の回りにある便利なものの「原理」を理解する助けにもなりますし、今まさに自分が不便だと思っていることがあるとしたら、それを克服するために「自分にも何か出来るかもしれない」と考えるきっかけにもなるかもしれません。
「過去に社会を方向づけたイノベーションのパターンから学ぶことは、たとえその過去についての私たちの解釈が、科学的理論とまったく同じに反証可能ではないにしても、私たちが未来をうまく進む助けにこそなれ、妨げにはならない。」と著者のジョンソンさんは言います。
そして「テクノロジーの進歩は私たちの周囲の可能性を広げるが、その可能性をどう探るかは私たち次第である。」なのだとか。インターネットやAIの発展で、便利さとともに失職の恐怖、サーバー犯罪・戦争などの脅威にもさらされている私たちですが、先人たちと同じように、何とか知恵を絞って克服していかないといけないな、と痛感させられました。
とても面白くて、歴史や科学の勉強にもなる人類進化の歴史の本。ぜひ読んでみてください。お勧めです☆