『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』1999/3/1
バーバラ ミント (著), Barbara Minto (原著), 山崎 康司 (翻訳)

「ピラミッド原則」を使って、考える技術と書く技術(ビジネス文書の技術)を教えてくれる本です。マッキンゼーをはじめとする世界の主要コンサルティングファームでライティングのコースを教えるミントさんが、プロの経営コンサルタントを対象に、どうすればわかりやすい報告書が書けるかを解説した経験がベースになっているので、1999年発行の古い本ですが、今でも実践的に役に立つと思います。
さて「ピラミッド原則」というのは、ミントさんが考案した「物事を上手に論理立てて述べるテクニック」で、その基本となる考え方は、次の通りです。
「読み手にとって最もわかりやすいのは、まず主たる大きな考えを受け取り、その後にその大きな考えを構成する小さな考えを受け取るという並べ方です。主たる考えとは常に一連の小さな考えから導かれるものですから、理想的な考えの構成は常にピラミッドを形作ります。つまり、頂上に主たる大きな考えがひとつあり、それを小さな考えのグループが下で支えるピラミッドです。」
「ピラミッド内のメッセージは、上、下、横の3つの方向で関連づけられています。上部のメッセージは下部の複数の考えを要約したものであり、逆に言えば、下部の複数の考えは、上位のメッセージを説明しサポートするものです。同レベルのメッセージは、横方向に論理的な順序で並べられます。その論理的な順序は、ピラミッドが演繹的に構成されているか、帰納的に構成されているかによって異なります。」
要するに、ピラミッドの頂上となる「主たる考え」を据えて、それをまず提示してから、従属する話を続けていくという論理構成で文章を書いていくと、読み手にとって分かりやすい文章になるということなのでしょう。
この本は単純な「作文技術」を教えてくれる本ではありません。文章の書き方(表現の仕方)についても解説してくれますが、メインとなるのは、「論理構成の組み立て方」と、その論理構成を作り出すための「考える技術」です。考える技術があってこそ、説得力があって分かりやすい文書を書けるのだということを痛感させられました。
またメインとなる文章に入る前には、「導入部」を設けることも大事で、この導入部で、メインとなる文章を理解するための準備をするそうです。
「導入部では、読み手がすでに知っていることを要約することによって、これから文書中で答えねばならない疑問を明らかにします。」
そして「よい導入部を書く」には次の3点に考慮する必要があるそうです。
1)導入部とは、知識を与えるためのものではなく、思い起こさせるためのものである。
2)導入部にはストーリーの3要素(状況、複雑化、解決)を常に含ませる
3)導入部の長さは読み手の必要性と文書のテーマによる

この本は、読み手にとって分かりやすい文書を書くためには、どのようにすべきかを「ピラミッド原則」と実際の文章の例で教えてくれる本で、とても参考になりました。
ただ……実際の文章の例の方は、コンサルタント向けの解説(文章)のせいか、あまり分かりやすくはありませんでした(汗)。「コンサルタントのように思考する」ための技術を身につけたい方には、おそらく実践的に役に立つのだと思いますが、一般のビジネス文書を書きたい方には、あまりピンとこないかもしれません。
ミントさんも、「よい問題解決は曖昧な状況の中では生まれません。したがってまず、対象分野全体(製造、マーケティング、情報システムなど)の知識を有することが要求されます。問題発生分野の知識を欠かすことはできません。」と言っているように、論理構成を組み立ててビジネス文書を書くときには、「対象分野をよく知っている」ことが大前提となるのです。私にとって、この本の実際の文章の例が分かりやすくなかったのは、対象分野をよく知らないことも原因の一つのような気がします(汗)。
それでも、「ピラミッド構造を作る」ことを意識して論理を組み立てることや、その下となるものをグループ化することで、状況や自分の考えを整理していくことなど、一般的な「考える技術・書く技術」としても参考になることが、たくさんありました。
また巻末には、「追補B 本書で述べた重要ポイントの一覧」があるので、自分の考え(文書)をどうまとめるか迷った時には、この一覧を眺めると、何かのヒントを得られるかもしれません。
明快な文章を書くことは、明快な論理構成をすることにほかならない……「自分の考えをまとめて、読み手にとって分かりやすい文書を書く」ために、とても参考になる本でした。ぜひ読んでみてください☆