『日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用』2017/6/15
大湾 秀雄 (著)

働き方改革の実行や、労働生産性アップなど、多くの日本企業が抱える人事上の課題について、データを使って科学的に分析・活用する方法を解説してくれる本です。
働き方改革の実行や、女性管理職の育成、労働生産性アップ、ストレスチェック、採用、管理職評価、離職対策、高齢者雇用など、人事部門は様々な課題について現状を把握し、数値目標を立てて改善に取り組まねばならなくなっています。
これまでの日本では、人事の課題を扱う研究は「人的資源管理論」が主流で、定性的な分析に終始していることが多かったようです。また日本の企業も、新卒採用・画一的キャリアトラックで社員を一元管理することが多かったので、経験や勘にもとづく運用でも、さほど大きな間違いがなく済んでいたのかもしれません。
でも現在は、グローバル化や女性活躍推進、働き方改革といった人事環境変化の中で、キャリアパスは多様化してきていると著者の大湾さんは言います。これに対応するために、人事部門でもデータを活用し、PDCAサイクルを回すべきなのだそうです(※PDCA=計画・実行・評価・改善)。そしてこれまでは、人事や組織改革に関しては、このうちの計画・実行だけで、評価・改善が欠けていると指摘しています。これからは人事データを活用して、科学的に評価・改善をしていくべきなのだとか。
人事データを活用していくためには、次の5つを行うことから始めると良いようです。
1)ある目的で意思決定に用いたデータ(異動・昇進など)をすべてデジタル情報として保存する。
2)人事データを一元管理する。
3)統計リテラシーの高い人間を少なくとも1人、人事部に配置する。
4)統計ソフトを一つ購入する。
5)業務指標を増やす努力をする。評価制度に客観的尺度・主観的尺度をバランスよく用いる工夫をする。

外国の例ですが、米フォーチュン誌の2017年「最も働きやすい企業100社」の1位となったグーグル(6年連続1位)は、現行の人事制度に問題がないかどうか、データを用いた評価を行うことで有名です。この本でもその内容の一部が具体的に紹介されていますが、グーグルでは当たり前のようにPDCAサイクルを回しながら人事における意思決定を行っているので、どのようにPDCAサイクルを回したらいいのか迷う方は、グーグルの例を参考にするといいのかもしれません(グーグルのボックさんの本『ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える』が参考になると思います)。
日本の企業で、グーグルほど思い切った「実験的」な方法を取るのは困難かもしれませんが、この『日本の人事を科学する』では、女性活躍支援、働き方改革、採用、管理職評価、離職対策、高齢者雇用のそれぞれの課題について、問題点と解決策(の一部)を分析・提示しているので、実践的に参考になると思います。
現実の会社の取り組み例も、いくつか紹介されています。例えば、働き方改革では、残業時間を減らしながら業績を改善させた例や、開発プロセスの改善によって作業時間を平準化した例が、具体的に紹介されているので、同じような業態の方は、それを真似することから始めてみてもいいかもしれません(ちなみに開発プロセスの改善は、「ユニットテスト→システムテスト」の順で行っていたものを、「システムテスト→ユニットテスト」に変えてみたという思い切った取り組みでした)。
コンピュータの能力はどんどん向上しているので、人事管理にデータ分析を生かすことで、みんなが、より幸せな働き方が出来るようになるといいな、と願っています(なお人事データは個人に関わるものなので、当然のことですが、データセキュリティを確保すること、データ活用が従業員の不利益になる使い方を避けることを忘れてはいけないと思います。人事データの活用を促進する前には、社内ルールを整備しましょう)。
とても参考になる本でした。ぜひ読んでみてください。