『仮想通貨とブロックチェーン (日経文庫)』2017/4/15
木ノ内 敏久 (著)

いよいよ実用段階に入ってきた感のある仮想通貨とブロックチェーンについて、全体像をコンパクトに解説してくれる本です。
そもそも通貨とは何かから始まって、これまでの仕組みとどこが違うのか、ビジネスにどのようなインパクトがあるのか、規制のあり方や弱点についてなど、幅広くまとめてくれています。仮想通貨やブロックチェーンがどのように実現されているかなどの技術的な話より、現時点での価格や総量(約1600万BTCのビットコイン(時価総額は日本円で2兆円を超える))、これまでの経緯(問題など)や、法的にどう扱われてきたかなどの現実的な話が多いので、一般の人にも分かりやすいのではないでしょうか(ただし専門用語もかなりあるので、法律や経済の知識があると、より理解しやすいとは思いますが)。
個人的には、「第III章 ビットコインを取り巻くルール」の「1 ルールの桎梏」がとても参考になりました。
2014年3月の時点では、政府は「強制通用力が法律上担保されていないから、ビットコインは通貨には該当しない」と、詭弁的な答弁をしていたそうです。その後、自民党はビットコインやブロックチェーンがもたらす破壊的イノベーション(技術革新)に着目し、立法による規制ではなく、新しい産業として育成する道を選びました。そして2016年に、仮想通貨法が成立。さらに、財務省は他との整合性を取るため、仮想通貨についても非課税とする方針に転換し、非課税化が2017年7月から実現することになったそうです。結局、日本国内における仮想通貨の法制化は、電子マネー、資金移動業、資金清算業の三つの決済サービスを規制する資金決済法の中に、新しく「仮想通貨」の項目を盛り込む形で決着したのだとか。
そしてもう一つ参考になったのは、日本のブロックチェーンのスタートアップ企業・オーブの「スマートコイン」という地域通貨。このスマートコインが取り入れている仕組みは、すごくユニークで「目からウロコ」でした。その仕組みとは、「通貨の価値が次第に低下する「自然減価」の機構」が入っていることで、これは、ドイツ・バイエルン州で使われている地域通貨「キームガウアー」を模倣したものだとか。時間がたつとコインの価値が下がってしまうので、保有者はすぐに使おうとするようになり、資金循環が活発になって地域経済が上向くという理屈だそうです。……なるほど。そう言えば、期間限定ポイントやクーポンをもらうと、それを有効活用しようとして急いで何かを買おうとしてしまいます(汗)。そういう心理を活用しようということなのでしょう。ちなみにこの貨幣の自然減価を最初に提唱したのはドイツの実業家で経済学者のシルビオ・ゲゼルという人物で、「労働の生産物である商品は時間の経過で劣化して価値が下がる。商品流通を媒介する貨幣の価値が劣化しないのはおかしい」と考えていたそうです。うーん……そうなんでしょうか?
さて、この本では、「第IV章 ブロックチェーン2.0」で、仮想通貨やブロックチェーンが既存の組織(特に金融機関など)に与える影響や、その対応状況について紹介した後、「第V章 仮想通貨のアキレス腱」で、仮想通貨やブロックチェーンの今後を考える上で重要となる問題点についても指摘しています。
「誰も責任を取らないシステム」は利点でもあり欠点でもあること、新規コインの供給が止まった後の仮想通貨がどうなっていくのかの見通しなど、仮想通貨には超えるべき課題がまだまだたくさんありそうです。
それでも「通貨」がそもそも実体を必要としないものである以上、少なくとも通貨の「電子化」の流れは止まらないでしょうし、私たちが「仮想通貨」とどう付き合っていくかは、社会的に非常に重要な問題になっていくのも確かでしょう。今後も、その動向に注目していきたいと思います。