『ブロックチェーン・エコノミクス 分散と自動化による新しい経済のかたち』2017/4/15
高木 聡一郎 (著)

ブロックチェーンの技術と仕組みの解説とともに、最新動向・知見から、組織・社会・経済へのインパクトを教えてくれる本です。
特に参考になったのが、ブロックチェーンとIoT、スマート・コントラクトに関する部分。実は、ブロックチェーンにはデータだけでなく、プログラムも載せられるそうです。
「ブロックチェーンの原型は情報を載せる台帳のようなものであり、データを操作するのは基本的に外部のアプリケーションの仕事であった。しかし、徐々にブロックチェーン上に、コンピュータ・プログラムを格納し、動作させることもできるようになっている。ブロックチェーン上にデータだけでなくプログラムも載せることで、デジタル資産を登録するだけでなく、資産の移転やそれに付随する業務を自動的に実行する「スマート・コントラクト」と呼ばれる仕組みが生まれてきた。こうした仕組みを発展させ、汎用的にどのようなプログラムでも実行できるようにした仕組みが「イーサリアム」である。ここに至って、ブロックチェーンは資産を管理するための「台帳」という役割から、汎用的なネットワーク型コンピュータへと変わりつつある。」
そして、このスマート・コントラクトは、IoTととても相性が良いようです。
「スマート・コントラクトをIoTに適用すれば、デバイスが連携する都度、契約を結んで処理を行い、支払いまで完了するといったことが可能になる。」のだとか。
ブロックチェーンは、IoTに次の5つのものをもたらす可能性があるようです。
1)壁を越えたデバイスの連携
2)デバイス連携と決済の融合
3)ユーザーへの価値還元とプライバシーへの補填
4)データストアによる蓄積と非同期の活用
5)デバイスシェアリングの実現
……なるほど。ブロックチェーン技術を活用したスマート・コントラクトがIoTと連携するようになると、経済・社会には大きな変化が起きそうですね。著者の高木さんも次のように言っています。
「スマート・コントラクトは、コードをブロックチェーンに埋め込むことにより、外部の中央管理者から独立性を高めた処理を行うことができる。スマート・コントラクトに書かれた処理は、もはやそれを書いた人から独立し、ブロックチェーンという世界で共通の処理規約として存在し、実行されることになる。分散化でもあり、究極の自動化とも言える。」
この技術は、実際の関係者(利用者)同士を仲介者抜きで直接結びあうので、さまざまな面でのコスト削減や、目的外利用の排除など不正防止にも役立ちそうですが、中央管理者不在のまま実行まで進んでしまうので、ハッキングによる不正行為や危険行為などが発生しないか、とても心配になります。このスマート・コントラクトは、すでに「イーサリアム」という形で実現しているそうなので、今後も注目していきたいと思います(なお、DAO事件に象徴されるように、「イーサリアム」は問題を抱えています。DAO事件というのは、イーサの多額の盗難を受けて、イーサリアムがハードフォークにより盗難自体をなかったことにしたのですが、この処置に反対する人々がイーサリアム・クラシックを立ち上げ、二つのバージョンが競合することになった事件です)。
この本には、その他にも、ICO(デジタル通貨発行による資金調達)のメリットと懸念などの新しい情報も紹介されていて、とても参考になりました。あっさりした表紙のあまり厚くない本ですが、ブロックチェーンについての幅広い情報がぎっしり詰まっています。ブロックチェーンについては、今まで多数の本が出版されていますが、ブロックチェーンの技術と基本的な仕組み、暗号化や取引構造、プルーフ・オブ・ワークなどについても、図解を通じて詳しく解説されていますし、組織・社会・経済へのインパクトについても、幅広い内容が、簡潔に分かりやすく紹介されているので、ぜひ読んでみてください。