『なぜ会社は変われないのか―危機突破の企業風土改革』1998/1
柴田 昌治 (著)

八方ふさがり状態の日本の会社を本当に蘇らせた「風土・体質革新手法」をドラマで説き明かしてくれる本です。1998年に単行本が出されたかなり昔のビジネス書ですが、2017年の今でも役に立つと思います。
さて、ここで描かれているのは、日本の自動車部品メーカー。リストラで人も給料も減らされたのに、上からは改革の掛け声ばかり。残業を重ねて社員は必死に働くのに、会社は赤字。社内には不信感が渦巻き、口ばかりの評論家が氾濫……という状態にあります。ただしみんな何かしらの危機感は抱いているので、社長交代を機に「BRP(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)委員会」が設置されました。このメンバーの若手社員・瀬川を中心として、この自動車部品メーカーは少しずつ変わり始めていきます。それがドラマ仕立てで描かれているのです。ドラマ仕立てなので状況がリアルに分かり、彼らの八方ふさがり感に、「わかるわかる」と共感してしまう方も多いのではないかと思います。
「風土・体質改革」を進めていくのに大事なのは、「自らの力で変わろうとする力」と「仲間と助け合う力」なのではないでしょうか。そのために、お互いに本音で話し合う機会を設ける必要があることを、この本では教えてくれます。
「ものが言える自由な雰囲気というのは、ただ「正しいこと」だけが自由に言える雰囲気のことではない。「もしかしたら間違っているかもしれないこと」も自由に言える雰囲気である。」と著者の柴田さんは言います。
さて、自分の会社を良くしていくために、瀬川たちは、コンサルタントの力も借りて、まず「オフサイト(職場を離れた)ミーティング」を実施します。「問題解決や結論を求めることを前提にしないで、みんなが日常的にもっている問題意識をぶつけ合って、ざっくばらんに機論しようという場」です。この期間がなんと二泊三日! ドラマの中では、最初のオフサイトミーティングの一日目は自己紹介、二日目はテーマを選んでのグループディスカッション、そして三日目は社長も加わって議論のまとめや共有を行いました。その最大の成果は、「同じような思いをもつ仲間が会社にいる」ことを知ったこと。
……三日もかけて「問題意識のぶつけあい&議論」ですか……さすが昔の会社は悠長でしたね、とちょっと思ってしまいました(汗)が、いやいや、待てよ、ここで行われるのは、一般的な「問題解決」ではないんだ、「問題解決」以前の「風土体質改革」なんだ、と気づいたときに、やっぱり「三日」は必要なのかもと考え直させられました。というのも、風土というのは各職場で長年かけて醸成されてきたものなので、変えるためには、それなりに時間が必要だからです。実際にこの本の中のドラマでも、オフサイトミーティングは、メンバーを変えて全社的に「何度も」実施されていきます。こうして社内全体の風土を、じわじわ変えていくのです。
そして彼らが選んだのは、「実際の担当者を責任者にする」こと。小さく分けた責任を、各自が分担することで、活性化とスピードアップを図ります。しかも、こうして「権限を委譲すること」は、たとえ失敗したとしても、「自分の責任で判断して失敗することは最高の教育」になりますし、自然に「意思決定の分散化」にもなるというメリットがあります。
こうして彼らの会社は、しだいにうまく回り始めました。そんな矢先に、親会社が突然、生産開始があと1年6か月に迫った新規開発エンジンの納入価格の30%引き下げと、現行エンジンについても6か月の猶予での同率引下げを要求してきたのです。彼らの会社は、果たして生き残っていけるのでしょうか……。
というストーリー。
うーん、厳しい話ですよね……。もちろんここまで「自ら変えてきた」彼らのこと、何とかしないわけはありませんが……私だったら、こんな無茶を言ってくる親会社からは、いつか絶対に独立してやる!という闘志が、心の底から芽生えてくると思います。こんな「親」会社なんて、いりませんよね。
それはともかく、この本が書かれた時代よりも、さらにスピードアップしている時代に生きている者としては、この「風土改革」ミーティングの他に、小さな「問題解決」ミーティングも並行して行うべきではないかと思います。その小さな「問題解決」ミーティングは、「スピードアップ」を目的に行うもので、方法は、『SPRINT 最速仕事術』で教えられるものを使ってみてはいかがでしょうか。『SPRINT 最速仕事術』は本来、会社の大きな問題を、会社の上層部エリート中心で決める方法ですが、一般社員のトレーニングにも使えるのではないかと思います。「風土改革」の進める先は、通常「会社の効率化」になることが多いので、この二つのミーティングを組み合わせて両輪で回すことで、いっそう効果を上げられるのではないでしょうか。(なお、この二つは目的がまったく違いますし、ミーティングが要求している時間感覚も極端に違うので、完全に別々に実施すべきだと思います。)
この本は、発行年は少し古いですが、大企業病などの克服のために風土改革を行いたい方には、とても参考になると思います。ぜひ読んでみてください。