『ビッグヒストリー われわれはどこから来て、どこへ行くのか――宇宙開闢から138億年の「人間」史』2016/11/13
デヴィッド・クリスチャン (著), シンシア・ストークス・ブラウン (著), & 5 その他

人間とは何かについて、複雑さが増大する「8つのスレッショルド(大跳躍)」から考察した歴史の本です。普通の歴史本とは違って、なんと宇宙開闢からの138億年の「人間」史。最終章は未来予測です。
大型の400ページ越えの本に、壮大な歴史がぎゅっと詰まっています。各章それぞれが充実した専門書なみの内容なので、読み終えるのはすごく大変ですが(汗)、これ一冊で、最新の宇宙論、人類学などの自然科学と歴史学、地理学、社会学などの人文社会学を概観できるので、すごく勉強になると思います。内容は次の通りです。
第1章 第1・第2・第3スレッショルド:宇宙、恒星、新たな化学元素
第2章 第4スレッショルド:太陽、太陽系、地球の誕生
第3章 第5スレッショルド:生命の誕生
第4章 第6スレッショルド:ホミニン、人間、旧石器時代
第5章 第7スレッショルド:農業の起源と初期農耕時代
第6章 小スレッショルドを経て:都市、国家、農耕文明の出現
第7章 パート1 農耕文明時代のアフロユーラシア
第8章 パート2 農耕文明時代のアフロユーラシア
第9章 パート3 農耕文明時代のその他のワールドゾーン
第10章 スレッショルド直前:近代革命に向けて
第11章 第8スレッショルドに歩み入る:モダニティ(現代性)へのブレークスルー
第12章 アントロポシーン:グローバリゼーション、成長と持続可能性
第13章 さらなるスレッショルド?:未来のヒストリー

カラーイラストや写真も適宜挿入されていて、とても興味深く読めました。地球や人間の大きな歴史の流れの全体を、一気に眺められるので、自分がいままで持っていた知識を再整理できたような気がします☆
「農業」が始まった1万年前からは、変化のペースが速まったそうです。この頃から、動植物の生産量を増やすために人間が環境を作り変え始めたから……そして文明が起こって人口が爆発的に増加する……さらに大航海時代などを通した世界的な交易、知識の交換・蓄積・深化(コレクティブ・ラーニング(集団学習)の加速)が進み、産業革命へと進んでいきます。
1830年代にイギリスは中国と「アヘン戦争」を起こしましたが、19世紀末の時点で中国は全世界のアヘン供給量のうち95%を消費し、中国人のなんと10%がアヘン常習者にされていたとか! これによって中国は弱体化されてしまったのですが、その原因は、イギリスと中国の貿易不均衡にあったようです。イギリスは中国から絹・陶磁器・茶を輸入する一方で、中国はイギリスから買うものがなく対価を銀で受け取っていたのですが、イギリスは手持ちの銀がなくなってきたために、インド産のアヘンを売りつけることになった……貿易不均衡は恐ろしい解決法をもたらすことがあるのだなと震え上がってしまいました。そして現在、アメリカは日本や中国との貿易不均衡に苛立っています。やはり相手国とはウィン-ウィンの関係を築いていく努力を続けていかなければ、悲惨な事態を招いてしまうのかもしれないと痛感しました。
ところで、この本の中では日本は意外に大きく取り上げられていて、19世紀の帝国主義時代には、ロシアとともに「西側」と同じ位置づけで扱われています。また世界のGDPの推移を表した世界地図(第12章)では、インドと中国だけが目立っていた西暦1世紀ごろからすでに大きめで、以降安定的に肥大しています。今後もそうであり続けたいですね(笑)。
そして最後は未来予測。残念ながら太陽が寿命を迎えるころ、私たちの銀河は近隣のアンドロメダ銀河と衝突するので、惑星としての地球は終わってしまうようです(涙)。
おそらくその前に、地球からは生命体(?)が宇宙へ向かうことでしょう。そして大航海時代に人間がそうだったように、その生命体は違う星の文明とのコレクティブ・ラーニングで、新たな飛躍を遂げることでしょう。その生命体が果たして人間をベースにしたものかは分かりませんが、宇宙時間に耐えられるだけの長寿命のものである必要があるでしょう。それは身体のほとんどをサイボーグ化した人工知能搭載の生命(?)かもしれませんし、新しいクローン生命体に自らの知識を移植することで継代していく永遠の生命体かもしれません。新しいクローン生命体は、強化プラスチックの卵の中で成長するのかも……するとそれは新しい形での「卵生」なのかも……とさまざまな妄想が膨らみました(笑)。
この本が一冊あると、私たちの歴史を、宇宙開闢から大きく外観することが出来ます(用語集、索引もあります)。すごく参考になる素晴らしい本なので、親子みんなで読んで欲しいと思います。3700円+税とすごく高価な本ですが、それだけの価値は十分あります。
そしてこの本は、人類の宝として、できれば広辞苑のように最新知識を取り込む形で、定期的に改訂版を出して欲しいと思います。