『「ポスト真実」時代のネットニュースの読み方』2017/3/11
松林薫 (著)

ニュースをネットで読む人が増えていますが、アメリカ大統領選時に顕在化した偽ニュース問題などで、ネットニュースの信頼性は大きく揺らいでいます。こうした「ポスト真実」の時代にネットのニュースを正しく読むために、それぞれのメディアの特徴や使い分けや、ネット情報を正確に読み解くためのノウハウについて、日経新聞の記者を15年務めた松林さんが、その経験知を基に解説してくれる本です。
さて、「ポスト真実」時代を感じさせる象徴的事件として、この本の中では、「英国が欧州連合EUからの離脱を決めた6月の国民投票(離脱派は同国がEUに払っている拠出金が週3億5千万ポンドにのぼると強調して勝利を収めたが、これは不正確な数字だった)」、「米大統領選でのフェイクニュース」、「日本の医療健康サイトWELQの不正確なニュース」などを例にあげています。このうち特にWELQについては、運営会社がDeNAという大手企業だったこともあり、とても驚いたことを憶えています。「医療や健康」に関する記事なのに、科学的根拠に基づかない記事が多数紛れ込んでいたなんて……。松林さんが言うように、「デマや不正確な情報を、どのようにしてネットから排除していくかが課題」だと本当に思います。
ネット記事はスピード優先で掲載され、「訂正を前提としたメディア」なのだそうです。大手メディアのサイトの記事ですら、必ずしも正確ではないことがあるようなので、「裏」を取るように心掛けた方が良いのだとか。
そして「事実部分」について信用してもよいと思える資料として、次の5つを教えてくれます。
1)役所や公的機関の作成した文書
2)金融機関や大手シンクタンクの作成した資料
3)一般紙の新聞記事
4)学術書や学術論文
5)版を重ね、専門家にも引用されている書籍

またサイトの「信頼性のチェックポイント」として、次の3点に注目しています。
1)誤字脱字、こなれない文章があるかどうか
2)ポジショントーク(自分に都合が良いように情報発信)の可能性がある人かどうか
3)執筆者や資料の出典が明記されているかどうか

……確かに。私自身も、これらに注意したいといつも思っています……(汗)。
また、松林さんは、「自分で考えなくても、ネットで検索することによって誰かの主張や意見が簡単に手に入るので、それがあたかも自分の考えであるかのように錯覚し始める人も出てきています。」とも指摘しています。そして「自分の頭で考えるための一つの方法」として、「たとえ話を自分で作ってみるということ(例:『世界がもし100人の村だったら』)」などの方法を教えてくれます。
また、「メディア・リテラシーを高めるための最も簡単な方法」としては、「疑似的に「報じる側」、「報じられる側」を体験してみること」を勧めています。その方法の解説もありましたが……これを実際に行うのは、結構大変じゃないのかなと感じてしまいました(汗)。
それでもネットには、あからさまな偽の記事だけでなく、本物らしい怪情報や、不正確な記事が数多く存在していることも事実だと思います。自分にとって重要だと思う情報に出会ったら、その「裏」を取るようにすべきでしょう。これはネット記事を読む場合だけでなく、紙媒体の本を読む場合でも、心がけるべきことだと思います。私自身は、興味あるテーマについては、一冊の本だけを読むのではなく、複数の著者の本が書いた本を何冊か読み比べるようにしています。
さて、現在、新聞社の記事の有料化が拡大しつつあるそうです。ニュースを取材して正確に報道するには多額の費用が必要なので、記事に対価を払うのは当然のことだと思いますし、有料でもいいので、今後も「可能な限り正確で、役に立つ情報」を配信して欲しいと願っています。
そして「ポスト真実」時代の今後についてですが、意外にも(?)松林さんは、今後のネットは健全化していくだろうと予測しています。
「……ネットも成熟期に入れば、新聞と同じ道を辿ることになるでしょう。それが何十年先かはわかりませんが、将来は書き手のルールやマナーが共有され、お行儀の良いメディアになっていくのではないでしょうか。実際、ネットに関する法規制は整備が進んでいます。利用者に関するある種のマナーも生まれており、それに反すると「炎上」などの形でペナルティーを受けることも増えました。成熟への過程は、すでに始まっているとも言えるのです。」
……本当にそうなると良いな、と思います(願っています)。私自身も、「可能な限り正確で、役に立つ」記事を書いていきたいと考えています。
「「ポスト真実」時代のネットニュースの読み方」として、役に立つ方法を教えてくれるだけでなく、いろいろなことを考えさせてくれる本でした。ぜひ読んでみてください☆