『あたらしいあたりまえ。 暮らしのなかの工夫と発見ノート』2012/11/5
松浦 弥太郎 (著)

小さな発見や工夫、そんな「あたらしいあたりまえ」を大事にすることで、暮らしと仕事をイキイキと輝かせるためのヒントを教えてくれるエッセイ集です。
最初のエッセイ「心の中のテーブル」は、「自分にちょうどいい、小さな机。僕の心の中には、そんな机がありました。」という文章から始まります。心の中に、そんな小さな机を思い浮かべながら読み進めていくと、「ところが最近、心の中に家具が増えました。誰もが席につける大きなテーブルをひとつ、置いてみたのです。それは僕が今、人と一緒に働き、人と共に生きていくことを、学びつつあるから。いつでも誰かと腰を下ろしてきちんと向き合える、そんな場所を用意しておきたいと心に決めたからです。」とありました。……「心の中に他の人と向き合う大きなテーブルを置く。」この考え方に新鮮な驚きを覚えました。このエピソード(イメージ)が示すように、この本には、他の人々への優しい視線がいつも感じられます。
「第3章 昨日にこだわらない。―いらなくなった「思い込み」は、捨てる」では、いたましい事件にまきこまれた人たちと話す機会があったというエピソードが紹介されています。
「部外者である僕は、黙って話を聞いていたのですが、「松浦さんはどう思いますか?」と感想を求められたとき、正直にこう述べました。
「忘れてしまったほうがいいですよ」」
……これ、私も本当にそうすべきだと思いますが、果たしていたましい事件に巻き込まれた人たちに、面と向かってそう言えるだろうか、と考えると……かなり迷ってしまいそうな気がします。でも松村さんが「「絶対に許さない」と決めた瞬間、罪を犯した相手だけではなく、自分自身も自由を失ってしまいます。恨みは相手を縛る鎖になると同時に、自分をも縛りつけるものなのです。」と語っているように、「悲しい出来事を忘れずにいる」ことは、実は自分自身を「その出来事に縛りつける」ことになってしまいます。加害者を「許す」必要まではないと思いますが、「忘れる」ことで、その出来事から自分を解き放った方が、自分の人生をより明るい方へ向けていけるのだと思います。このエピソードには、松浦さん「優しさ」の裏にある精神的強さを感じさせられました。
さて、最終章の「第4章 毎日をちょうどよく。―自分のペース、ルール、バランスを見つける」では、「心の部屋の掃除」というエッセイで、最初のエッセイ「心の中のテーブル(心の中の部屋)」が再び登場します。心がざわざわしたときに、松浦さんがやっているイメージトレーニングがあるそうです。それは、次のように行います。
1)自分の心を部屋だと想像する。
2)イメージできたら部屋の中に入る。部屋の色彩、家具を思い浮かべる。
3)そこにある小さいものに意識を向ける。
4)イメージの中で、本をそっと棚に戻したり、いらないものを捨てて、整理整頓、掃除する。

このように心の部屋を掃除していくと、「ざわざわした」心が、だんだんと静まっていきそうです。私自身の場合は、イライラしている時は、「実際に部屋を片づける」ことで心を静めています(部屋も片づくので一石二鳥です)が……外出先など、実際に部屋を片づけることが出来ない場所にいる時には、「心の部屋」を掃除するといいのかもしれません……こんな「あたらしいあたりまえ」を、私も見つけていきたいと思います。