『人生の意味の心理学』1984/5/20
A.アドラー (著), 高尾 利数 (翻訳)

人生についての意味づけ(ライフスタイル)を変えれば、世界は驚くほどシンプルになる……心理学の巨匠アドラーさんが、人生の意味について雄弁に語ってくれる本です。
岸見さんの驚異的ベストセラー『嫌われる勇気』で一躍有名になったアドラーさん本人が書いた本(の翻訳版)なので、アドラー心理学の真髄に直接触れることが出来ると思います。
テーマは全部で12。「人生の意味」「心とからだ」「劣等感と優越感」「初期の記憶」「夢」「家族の影響」「学校の影響」「思春期」「犯罪とその予防」「職業」「人生とその仲間」「愛と恋愛」……これら人生にとって非常に大事なテーマに沿って、アドラーさんが自分の考えや体験を雄弁に語ってくれます。
なかでも最初の「人生の意味」では、その本質とも言える心に響く文章に数多く出会うことが出来ました。その一例を以下に紹介させていただきます。
「われわれは、むやみやたらに進んだり推測に従って仕事をすることはできない。そうではなく、組織的に、用いうるあらゆる手段を活用して進んでいかなければならない。われわれは、一度で永久に確立されるような完璧な解決などを見出すことはないであろう。それにもかかわらず、われわれは、可能なかぎり最良の答えに到達しうるよう全力を投入しなければならない。」
「人生とは仲間の人間に関心を持つこと、全体の一部となること、人類の福利にできるだけ貢献することである」
「われわれは、われわれが自分の経験に与える意味によって「自ら決定した者」である。だから、われわれが特定の経験を、自分たちの将来の人生のための基礎と考えるときは常に、おそらく何かの過ちが含まれているのである。意味は、状況によって決定されるのではなく、われわれは、われわれが状況に与える意味によって自らを決定するのである。」

アドラーさんは特に「他者への関心と貢献、協力」を重視しているようです。そして「甘やかされた子供たち」や「犯罪者たち」は、成長過程で「貢献、協力」を学ばなかったのだと言います。アドラーさんは、憂鬱症の患者さんにすら「毎日どうやったら誰かを喜ばせることができるか考えてごらんなさい」とアドバイスしています。
また、「自分の人生は自分で決められる」のだと考えているようです。これはある意味で、とても厳しい態度なのではないかとも感じました。
「われわれは、自分で自分の人生を作っていかねばならない。それは、われわれ自身の課題なのであり、われわれはそれに取り組むことができる。われわれは、自分自身の行動の主人なのだ。」
「もし人生が、こういうふうに、自立的な個々の人間たちの強力として取り組まれるならば、われわれ人間の社会の進歩に限界は見られないのである」
自らが貢献するだけでなく、周囲の人々も他人へ貢献できるよう促していく(勇気づける・環境を作る)……そうすることで実現していく社会は、きっと心地いいものになることでしょう。
残念ながら現代社会では、「いかに得をするか」と利己的に考えることが賢い生き方のように思っている人が多いような気がします。そういう考え方は、結果的に、周囲を同じように「利己的」な人で満たしていくことになるのだと思います。誰も「損をしたい」とは思わないので、「他人への貢献=自らの損」と考えるように「学んで」しまうからです。
でも、人間の真の幸福というのは、周囲の人と気持ち良い人間関係を築けることにあるのではないでしょうか……そのためにもアドラー心理学の考え方を、少しずつでも広めていければいいな、と思います。ぜひ読んでみてください。