『リーダーはストーリーを語りなさい―顧客と従業員を魅了し、説得し、鼓舞する究極の方法』2013/3/23
ポール・スミス (著), 栗木 さつき (翻訳)

みんなが関心を寄せるのはスクリーンではなく、あなたが「何を語るか」だ……P&Gで消費者コミュニケーションを研究したスミスさんが、顧客と従業員を魅了するストーリーの威力を、実践的に分かりやすく解説してくれる本です。
スミスさんは、P&GのCEOのラフリーさんにプレゼンをした初回のことを鮮明に記憶しているそうです。役員専用特別室でパソコンの準備万端で待ち受けていたところ、到着したCEOのラフリーさんは、なんと円卓のスクリーン真下の席に腰を下ろしてしまったのです。それもスクリーンに背を向けて……。そして彼はそのままスクリーンを一度も見ないまま、プレゼンに耳を傾けていたのだとか。
結果的にプレゼンは成功しましたが、この経験はスミスさんに強い印象を与えました。
CEOのラフリーさんには、プレゼンで語られる重要なことは、必ず口頭で説明されることが分かっていたのだ……その日からスミスさんは、自分のプレゼン・スタイルを変えたのです。スライドの数を減らし、体験談や逸話を語るようにしました。するとプレゼンはがぜん効果的になったそうです。
「ストーリーテリング」には、「シンプルである」「あらゆるタイプの人に訴えかける力がある」「人から人へと広がりやすい」「覚えやすい」「人を奮い立たせる」など、いくつもの大きな力があるのです。
この本は、「ストーリーテリング」の方法を、豊富な実例と共に実践的に詳しく解説してくれます。
「ストーリー」を作る時には、次の点に考慮して作ると良いそうです。
1 構成
1-0 作る前に考慮すること(伝えたい主題は? 聞き手にとってほしい行動は? 他)
1-1 背景説明(主人公、目的、障害 他)
1-2 行動(主人公の身に何が起こる? 対立、一時的挫折、山あり谷、結論 他)
1-3 結果(主人公は勝つ負ける? 正しい教訓、理由 他)
2 構成要素
2-1 具体的にわかりやすく話す
2-2 スタイルの工夫(冒頭で心をつかむ)
2-3 感情に訴えかける(感動のストーリー、相手が関心をもっていることに結びつける)
2-4 サプライズの要素を取り入れる
2-5 比喩の活用
2-6 聞き手をストーリーに組み入れる

さて、どう作ればいいかは分かったとしても、実際に「ストーリー」を作るとなると、やっぱり迷ってしまうと思います。この本には、豊富なストーリーの実例があるだけでなく、参考にしやすいように、付録に「そのストーリーはどんな場面で使えるか」を示した一覧表も掲載されているので、自分が伝えたいことに近いストーリー数例を本書の中から探して、それを参考に作り直すと良いと思います。実は、本書内のストーリーはアメリカの話がほとんどで日本人にはあまりピンとこないものも多かったと感じたので、実際に使う場合には、多少作り直す必要があると思います。
また、プレゼンのすべてを「ストーリー」で話す必要もないと思います。「ストーリー」を作るのは、結構大変な手間がかかりますし、「ストーリー」で一度に伝えられるメッセージは、1~2点だけだと思いますから。だから「ストーリー」を使うプレゼンをするのは、すごく重要な方針を確実に伝えたいと強く願っている時だけに絞った方がいいと思います(その方がむしろ効果的にもなります)。例えば、会社の方針を大きく転換すべきだと考えている時、社員のモラル向上を図りたい時など、伝えることは「重要」だが「1つか2つだけ」の時に、「ストーリー」を使うと、とても効果的で波及効果も期待できると思います。
例えば、この記事冒頭で紹介した「P&GのCEOのラフリーさんへのプレゼン」も「ストーリー」の1つですが、ここで伝えられたメッセージは、「スライドなどの視覚資料に頼らす、口頭でメッセージを伝えることの重要性」でした。でも、この短い文章を読むよりも、「P&GのCEOのラフリーさんへのプレゼンのストーリー」を読んだ方が、場面が具体的に思い浮かぶので、心に残りやすいのではないでしょうか。
「ストーリー」は、ここぞという大事なプレゼンで使える凄い技法だと思います。プレゼン力や指導力を向上させたい方は、ぜひ読んでみてください☆