『自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫)』2016/6/18
東田 直樹 (著)
『自閉症の僕が跳びはねる理由 (2) (角川文庫)』2016/6/18
東田 直樹 (著)
自閉症の東田さんが、質問にこたえる形で自分の気持ちや考えを明かしてくれる本です。『自閉症の僕が跳びはねる理由』は中学生の頃に書かれたもので、その続編の『自閉症の僕が跳びはねる理由 (2) 』は高校生の頃に書かれています。
私は読書や工作が好きなせいか、どちらかと言うと「引きこもり」系なので(汗)、自閉症はその症状がごく重くなったようなものかと誤解していましたが、どうやら脳に障害があって、人とのコミュニケーションに困難を感じるもののようです。もっとも自閉症と言っても、いろいろな症状があるようですが……。
これらの本は、「言葉を発する」ことにすら困難を感じる東田さんが、文字盤による筆談で自分の気持ちを綴っています。
例えば「いつも同じことを尋ねるのはなぜですか?」という質問に対しては、
「どうしてかと言うと、聞いたことをすぐに忘れてしまうからです。今言われたことも、ずっと前に聞いたことも、僕の頭の中の記憶としてはそんなに変わりはありません。」などの答えを、見開き1ページぐらいの文章で回答しています。
この文章を書くのには、おそらくすごく時間がかかっているに違いありません。『自閉症の僕が跳びはねる理由 (2) 』には、「文字盤を見ているときには何を考えていますか?」という質問があるのですが、その解答の一部に次のような文章がありました。
「文字盤を見ているときの頭の中の思考は、こんな感じです。1)言いたい言葉を思い出すために、文字盤やパソコンのキーボードを見る。2)気になる文字が目にとまる(例えばK)。Kが見つかると、頭の中にKA・KI・KU・KE・KOが現れる。3)その中から、最初の文字が見つかる。それが、KAならKAと文字盤のアルファベットを指さす。すると、かさ・かき・かく・かわいいなどのKAで始まる単語が、頭の中に浮かんでくる。4)この中から、言いたかった単語の「書く」が見つかる」
……文章を書くのに、こんなに苦心しているんですね。それでも東田さんは、一つ一つの質問に、すごく真面目に丁寧に回答しています。苦しくてもこうして伝えようと努力することだけが、自分の気持ちを伝えることが出きる唯一の方法だということを分かっているのでしょう。自閉症というのは、どうやら脳の機能障害のように思えるので、脳科学が進みつつある現在、fMRIなどの機械を活用して、障害の状態や原因などが解明されて治療が進む(症状が改善する)ことを願いたいと思います。
最後に、「されて嫌なこと」「して欲しいこと」を紹介させていただきます。(どちらにも、「僕の場合です」や「僕がして欲しい援助です」という但し書きがついています)。
「されて嫌なことは何ですか?」
・何もわかっていないと思われ、無視されたり、僕について話したりされること
・僕がいる前で、親や兄弟が大変だという話をされること
・こうするのが本人のためだと勝手に思われ、意見されること
・奇声、こだわりなど迷惑をかける行動を僕がやりたがっていると思われること
「どのような援助をして欲しいですか?」
・笑顔で接して下さい。
・わかりやすく、はっきりした口調で話して下さい。
・要点をしぼって、短い文章で話して下さい。
・指示するときには、1回にひとつだけにして下さい。
・僕の言いなりにはならないで下さい
・危ないとき、悪い行動をやりそうになったときには、そうする前に注意して止めてください