『なぜ人はドキドキするのか? (知りたい! サイエンス) 』2017/1/21
中西 貴之 (著)

神経伝達物質と脳の基礎知識から、神経伝達物質と心、神経伝達物質と病気、食物と神経伝達物質の関係、神経伝達物質と薬の作用などを、総合的にやさしく解説してくれる本です。内容は次の通りです。
第1章 神経と脳とは何者なのか?
第2章 すべては神経伝達物質の創造物
第3章 神経伝達物質による生命の調整
第4章 こんな人の神経伝達物質はどうなっているのか
第5章 食品が神経伝達物質に与える影響
第6章 神経伝達物質やその受容体に作用する薬
第7章 幸せの青い鳥はどこにいるか

脳については結構勉強しているので、知っている内容も多かったのですが、最新の知見をもとに総合的に分かりやすくまとめられているので、参考書としてとても役に立ちそうです(巻末に索引もあり、内容を探しやすくなっています)。イラストも数多く掲載されているので、神経伝達物質の動きなども理解しやすいと思います。人体もある意味で「装置」に過ぎないんだなあ、と思わされました(汗)。
コラムの中で紹介されていた、九州工業大学の研究者による「じゃんけん必勝システム」、とても興味深く感じました。これは「脳波を解析することによって、頭の中で考えていることを解読するシステム」で、例えば「じゃんけん」で相手が次に何をだそうと考えているかが分かるのだそうです。声に出さなくても心の中で何を出そうか言いながらじゃんけんするだけで、脳波にはっきり違いが出たのだとか。他のことにも応用できそうで……ちょっと怖いなと思いました……。
また運動を制御している「小脳」に関する部分では、トレーニングは一気に行うよりも、毎日コツコツ続けた方が効果的だということが書いてありました。記憶の定着はトレーニング中ではなく、主にトレーニング後に行われるようです。運動は継続的にやった方がいいということは、昔から言われてきましたが、やっぱり科学的根拠もあったんですね。
そして意外だったのが、「第5章 食品が神経伝達物質に与える影響」で紹介されていた「セロトニンと肉との関係」。脳の覚醒や精神の安定、意欲のコントロールに関係している神経伝達物質のセロトニンは、脳内で合成する以外に手に入れる方法がないのですが、そのための材料を入手するには、肉が最も効率がよいのだそうです。実は、大豆など植物性の食品タンパク質中には、セロトニンを作り出すために必要な必須アミノ酸のトリプトファンが多くないのだとか。ダイエットや健康のためには植物性タンパク質がいいとよく言われているので、肉は少なめにしようと思っていましたが、やっぱり肉も必要だったんですね。……どうやら、いろんな食品を、よく噛んでバランスよく食べるのが良いようです(よく噛むと満腹信号のヒスタミンが増加するので、食べ過ぎを防ぐことが出来るそうです)。
その他、「負の電気抵抗」を利用して、脳の機能をコンピュータでアシスト(頭の回転を速くすることが)出来るかもしれないとか、微生物のなかには細胞(微生物)同士が互いに電子をやりとりする「電気共生」をしているものがいるとか、興味深い記事がたくさんありました。
分かりやすくて、とても勉強になる参考書でした。一般向けの本なので、専門家の方には基礎的過ぎて物足りないかもしれませんが、脳や神経系に興味のある方はぜひ読んでみてください☆