『「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ』2012/4/6
鈴木 博毅 (著)

第二次世界大戦での敗戦の分析を通して、日本軍が持つ構造的・精神的な問題を明らかにした名著『失敗の本質』を、現代のビジネスと照らし合わせながら読み解いた本です。
『失敗の本質』がベースになってはいますが、そこで指摘された日本軍の組織的病巣をもとに、鈴木さんが自らの視点で読み解いた本なので、すでに『失敗の本質』を読んでいる方にも参考になるのではないかと思います。元となった『失敗の本質』はすごく長いのですが、この本はそこから23のポイントを見出して分かりやすく解説しています(ただし、『失敗の本質』の内容自体にはあまり触れていないので、『失敗の本質』の概要を知りたい方にとっては、ちょっと当て外れに感じるかもしれませんが……)。
さて、『失敗の本質』から学ぶ7つの敗因として鈴木さんは次の7つをあげています。
1)戦略性(戦術・主義を超えるもの)
2)思考法(練磨と改善からの脱却)
3)イノベーション(既存の指標を覆す視点)
4)型の伝承(創造的な組織文化へ)
5)組織運営(勝利につながる現場活用)
6)リーダーシップ(環境変化に対応するリーダーの役割)
7)メンタリティ(「空気」への対応とリスク管理))

そしてそこから23の組織的ジレンマを指摘しています。その一例をあげてみます。
「05 ゲームのルールを変えた者だけが勝つ」
(日本は一つのアイデアを洗練させていく練磨の文化。しかし、閉塞感を打破するためには、ゲームのルールを変えるような、劇的な変化を起こす必要がある)
「15 現場を活性化する仕組みがない」
(米軍は作戦立案をする中央の作戦部員が、現場感覚と最前線の緊張感を常に失うことなく侵攻に邁進できた。現場の体験、情報を確実に中央にフィードバックし、目標達成の精度と速度をさらに高めていく仕組みをつくることが重要である)

このような23の組織的ジレンマが分かりやすく解説され、しかも章末毎に「まとめ」がつけられているので、すごく読みやすいです。
それでも、その中の「03 「体験的学習」では勝った理由はわからない」で指摘している「たまたまうまくいった成功体験の体験的学習は、教条主義や戦略なき全面展開につながりやすい」ということは、確かに真理なのかもしれませんが、変化の激しい現代では、そもそもトップダウン的に「戦略」を見出すのがとても困難なので、むしろ「たまたまうまくいく成功体験」を作り出すことが大切なのでは?とも感じました。売れそうな商品をいくつも試作してテスト販売してみるとか、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」式に小さく試してみて、「たまたまうまくいったもの」に集中するという方法もアリではないかと……。
……という感じに、『失敗の本質』から発想を展開させていったこの『「超」入門 失敗の本質』を、さらに自分の視点で発想を展開させながら読みました(笑)。こんなことが出来るのも、この本がとても読みやすく書かれているからなのでしょう。
そして、この本を読んで、元になった『失敗の本質』に興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください。長くて読むのは大変ですが(汗)、自分なりに考えながら読むことで、この本に書かれていないことまでも読み解くことが出来るかもしれません。「失敗」からは、成功よりもずっと有用なことが学べるのだと思います。