『お金はサルを進化させたか よき人生のための日常経済学』2014/11/14
野口 真人 (著)

ファイナンス理論、金融工学、確率論、統計学、行動経済学などを使って、「いかにお金を賢く使うか」を解説してくれる本です。
例えば、キャッシュフローを生むためのお金は「投資」、自分の満足のためのお金は「消費」、損することも覚悟して支払ったお金よりも多くの見返りを得ることに挑戦することは「投機」である、などの基礎的な経済用語を、分かりやすく具体的に解説してくれます。
個人的に参考になったのは、「第二章 不動産の知識がなくても3分で自宅の価値がわかる」にあった、「一都三県の築10年以内のマンションは、(マンションの価値=毎月の家賃×200倍)という式でほぼ適正な価値をだせる」というノウハウ。ただしこの200倍という数値は、いつも正しいわけではなく、港区千代田区など都心部の築10年以内のマンションの場合は、240倍になるとか(その理由や詳しい説明を知りたい方は、本を読んでみてください)。
また意外だったのは、「第四章 あなたの財布には歪んだコインが入っている(確率の錯覚)」にあった「3個の金庫(モンティ・ホール・ジレンマ)」の話。参考までに以下に概要を紹介します。
あなたはTVのクイズ番組で優勝しました。100万円の賞金が三つの金庫A、B、Cのどれかに入っていて、あなたがAを選んだとします。その後で司会者がBを開けて中に何もないことが分かった時に、司会者から「本当にAでいいですか? Cに変えてもいいですよ」と言われた時、あなたは、どうすべきでしょうか?
答えは「変更する」で、この場合、Aに賞金が入っている確率は1/3、Cに入っている確率は2/3になるので、Cの期待値はAの倍になるということでしたが……これにはどうしても納得できませんでした。この本に書いてある条件だけを読むと、AとCの金庫の「当たり」の確率は1/2ずつになるとしか思えなかったからです。
どうしても納得できなかったので、ネットで「モンティ・ホール・ジレンマ」を検索してみて、ようやく納得することが出来ました。というのは、「3個の金庫」の話には、この本の中では明確には書いてなかった裏設定があることが分かったからです。それは、司会者はあなたが選んだドア以外の二つのドアのうち、「賞金が入っていないドアを選んで開くことになっている」という設定でした。この本にはそれが書いてなかったので、司会者がBの金庫を開けてみたら、たまたま中に賞金が入っていなかったのだろうと考えてしまいましたが、そうではなかったのです。
司会者が選ばれなかった二つの金庫のうちの一つを開いてみせた時に、実は「選ばれた金庫(A)=確率1/3」と「選ばれなかった残りの金庫(B+C)=確率2/3」の二つのグループが出来て、司会者はこのうちの「選ばれなかった残りの金庫(B、C)」の中から「入っていない」金庫を「選んで」開けたのです。だからBの分の確率はCに加算されることになり、Cの当たる確率がぐんと上昇することになったのでした。
あー、この裏設定を教えてくれなかったから誤解しちゃったじゃないか(怒)、とちょっと思ってしまいましたが(汗)、さらによくよく考えると……司会者がBを開けて見せるときに、もしもBに賞金が入っていたら、そこで賞金イベントは終了になってしまうので、すごくガッカリな展開になってしまいますよね。ということは、Bには賞金が入っていないということをあらかじめ司会者が知っているということは、「賞金を選ばせる」場面としては当然の設定なのでした。つまり……私たち読者は、当然、この裏設定にも気づかなければならなかったのでしょう(汗)。この本を読んで、私と同じように納得できなかった方は、ネットで「モンティ・ホール・ジレンマ」を検索して確かめてみてください。
……えーと、このように「本に書いてあることでも、自分が納得できない時には、追加して調査する」という態度は、「お金の問題などで騙されない」ことにつながり、「より良い人生を送れる」ことにもつながるように思います(笑)。
ということで、必ずしも最初から全面的に信用して読んだわけではありませんでしたが(汗)、「人はなぜ当らない宝くじを買うのか」「なぜお金持ちはリスクを嫌うのか」「なぜギャンブルにはまってしまうのか」「なぜ人は生命保険に入るのか」など、誰にでも起こる身の回りの出来事を取り上げて、その裏に隠れているファイナンス理論や行動心理の理論を分かりやすく紹介してくれるので、とても興味深く、参考にもなりました。「お金の賢い使い方」に興味がある方は、読んでみてください。