『法律より怖い「会社の掟」―不祥事が続く5つの理由』2008/4/18
稲垣 重雄 (著)

日本を代表する大企業で次々と起こる不祥事の根本的な原因を、日本人の規範意識、共同体意識などから探るとともに、企業が進むべき新しいCSR(企業の社会的責任)の姿を示した本です。
不祥事が続く理由として、「日本人は対人関係を重視し、状況に対応して行動する。社会を形作っているのは「契約」ではなく「話し合い」で、社会的正義の絶対的基準は存在しない。」「日本人は所属する共同体への意識が高く、その維持存続を強く志向する一方で、外部世界には無関心・無頓着・冷淡になりやすい。」「時に、法規定や伝統的規範よりも優先される「会社の掟」が存在する。」など、全部で5つの理由をあげているのですが、その考察は、分かりやすく、しかも納得できるものでした。
また不祥事の7類型として、「経営効率過剰重視型」、「情報の非対称性悪用型」など7つのパターンを上げ、その「掟」と該当する過去の不祥事の例、その背景についても解説していて、これもすごく現実的で分かりやすいです。
例えば「経営効率過剰重視型」の代表的な掟の一つには、「成長こそ会社の第一の使命と心得るべし」のような至極まっとうなスローガンがあるのですが、これを従業員が、「当面の利益の獲得を諸規範に優先させよ」のように読み違えると不祥事に発展するそうで、この読み違えを起こさせるのが、会社の歴史や経営トップ・従業員の考え方、日頃の言動を反映させた「会社の掟」なのだそうです。
「掟=コストを最小化しロスを許すな」の場合は、「可能な限りやるべきことをやらず、かけるべき費用もかけずに何とかせよ」になるそうで……思わず笑ってしまいましたが、いかんいかん、まったく笑いごとじゃないですよね(汗)。
そしてこの本の素晴らしいところは、これら不祥事の歴史的文化的背景の考察や、類型分類だけにとどまらず、どのように不祥事をなくしていったらいいのかの方向性をも提案してくれていることです。
稲垣さんは、「不祥事を減らすのには、CSRが役立つのではないか」と言います。
CSRとは、「企業活動のプロセスに社会的公正性や環境への配慮などを組み込み、ステイクホルダー(株主、従業員、顧客、環境、コミュニティなど)に対しアカウンタビリティを果たしていくこと」だそうですが、稲垣さんは、「日本人には「相身互いで助けあう」「何事もほどほどに」という特徴的態度があり、それは、伝統的にCSRの理念に近い」と、CSRは、日本人に受け入れやすい概念ではないかと考えているようです。
そしてCSRの定着に不可欠な条件には、「経営に第三者の視点をとりいれること」、「長期的な視点をもつこと」の二つで、その前提となるのは、「会社が正しい情報を開示し、広く説明すること」だとも言います。
サリドマイドなどの薬害や、集団食中毒などの「命」にかかわる不祥事は、もう絶対に起きて欲しくないと思います。少しでも不祥事の発生を減らすことが出来るよう、情報開示に協力し、「掟」の正しくない読み違えをしていないかを自省し、社会的責任を自覚したいと思います。