『よくわかる人工知能 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ』2016/10/17
清水 亮 (著)

世界中が注目する人工知能ビジネスの現状と未来について、トヨタ、東大、スーパーコンピュータ開発の最先端研究者たちが語ってくれる本です。
『よくわかる人工知能 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ』というタイトルですが、「ディープラーニング」の技術的な解説というよりは、人工知能はいま何ができるのかに関する紹介と、研究やビジネスへの応用が今後どうなっていくのかへの考察が主な内容になっているので、人工知能の研究者の方だけでなく、一般の方にもとても参考になると思います。
最先端の研究者たちとの対談では、「生物の大半が雄と雌に分かれているんだから、雄と雌の人工知能を作らないといけないんじゃないか」というようなユニークな意見も飛び出して、楽しめました。もっともこれは、別に「雄と雌」のような区別でなくても、「得意分野がさまざま」な人工知能という意味なら、すでにそうなっていますよね? ゲーマー人工知能とか、画像認識が得意なアーティスト人工知能とか、翻訳が得意な人工知能とか……。
ちなみに対談している最先端研究者の方々は以下の通りです。
・松尾 豊(東京大学大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 特任准教授)
・岡島博司(元トヨタ・リサーチ・インスティテュート エグゼクティブ・リエゾン・オフィサー)
・村上真奈(NVIDIA社ディープラーニングソリューションアーキテクト兼CUDAエンジニア)
・田島 玲(ヤフージャパン研究所 所長)
・前野隆司(慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 研究科委員長・教授)
・満倉靖恵(慶應義塾大学 理工学部システムデザイン工学科 准教授)
・山川 宏(ドワンゴ人工知能研究所 所長)
・齊藤元章(PEZY Computing 創業者・代表取締役社長)

なかでも「グーグルが映画の字幕をひたすら読ませた研究」が面白いと思いました。その人工知能は、「おはよう」と言うと「おはよう」と返し、「調子はどう?」には「いいよ」、「スカイウォーカーって誰?」には「彼はヒーローです」、「モラルは?」には「人間性を与える知的なエッセンスさ」と返してくるようになったとか。……なんだか、かなり自然な受け答えをしているかのように見えますよね。人工知能が本当に「意識が持てる」かどうかはともかく、人間から見ると「意識を持っているかのように見える」ことになるのは確実でしょう。
個人的には、人工知能が「人間の脳」を完全に模倣する必要などないと思います。なぜなら人間の脳が「考えるのに最高な機構」だとは限らないと思うからです。もっとも現時点では最高だと思うので、その模倣を通して「考える」ことの高度化・洗練化を図るという方向性は間違っていないとは思いますが……。
人工知能は人間の脳を代替するのではなく機械知能の良さを追求し、人間の知性とうまく「協働」して、互いに高め合っていければいいのではと思います。
さて、本書の最後の「齊藤」さんとの対談は、かなり「マッド・サイエンティスト(汗……失礼)」的な意見も飛び出して、なんだかSFみたいだなーと、すごく楽しめました。「いま人間とコンピュータは結構つながるようになってきている。あと数年すると、ほとんどの人間の頭の中の知的な思考の内容が、情報としてコンピュータ側に伝えられるようになる。(コンピュータと人がつながれば、)人と人がつながることができる、テレパシー的に。」という話もありましたが……この未来は、幸福なのでしょうか?
すごく面白い意見が多かったので、頭がぐにゃぐにゃになりそうでした(笑)。
人工知能の未来……もしも人間の脳が「考える機関(器官)として最高のもの」で、人間の脳が電気信号で動くなら……アインシュタインさんなどの天才の脳をそのまま電気信号で保存し、未来の人間の脳(をベースにした人工知能)に電気信号で移植することで、「続き」を研究してもらえるのでしょうか? 残念ながらアインシュタインさんの脳(の電気信号)を復活させられはしないのかもしれませんが、未来の天才の思考(研究)は、継続的に活かせるのかもしれません(天才は、死ぬことは許さん。未来永劫、研究者として働け、ってことになるのかな?)
人工知能との私たちの未来を妄想させてくれる面白い本でした。ぜひ読んでみてください。