『ザ・チョイス―複雑さに惑わされるな!』2008/11/8
エリヤフ・ゴールドラット (著), 岸良 裕司 (監修, 監修), 三本木 亮 (翻訳)

「何が本当に重要か」を見極めるための思考法を教えてくれる本です。
ベストセラー『ザ・ゴール』のゴールドラットさんが、今回は、ご本人と娘(エフラット)さんとの会話という形で、「ものごとは、そもそもシンプルである」「人はもともと善良である」という二つの信念の根本的なあり方を説明してくれます。
今日の企業は高度に複雑化していますが、複雑なシステムの中でも本当に重要なことはいくつもないのだそうです。だから「何が本当に重要か」を見極めることができれば、企業は著しいパフォーマンスの向上を短期間で成し遂げることができるのだとか。
うーん……でもたいていの問題は「複雑」なのでは? と思ってしまいましたが、ゴールドラットさんは「複雑そうに見えるものも、深く掘り下げていけば「共通の原因」が現れてくる」と断言します。根底にあるのはすべてに共通した少数の原因、根本的原因しか存在していないのだそうです。
この本は、「明晰な思考」を通して根本にある原因を見つけ出す方法を、ゴールドラットさんのレポートを教材として、娘(エフラット)さんが考えていくという方法で書かれています。つまり読者は娘さんとともに、明晰な思考の方法をじっくり学んでいけるのです。
教材となるゴールドラットさんのレポートは、小売業などの企業の問題を解決に導いた報告で、このレポート自体もすごく参考になります。例えば、大手アパレルメーカーのレポートでは、「品切れ」「売れ残り(返品)」の両方を減らしたい、という矛盾するようなニーズ(問題)を見事に解決に導いていくのですが、この場合「需要は予測できない」ことを前提とするなど、本当に現実的な解決法を教えてくれるのです(解決の例:シーズン前の納品量は今の半分にし、売れ行きのよいアイテムだけを小売店から追加発注してもらって二週間以内に納品する)。
教材となるレポートと、ゴールドラットさんとの会話を通して、娘さんは最後に、「明晰な思考」で問題解決を行うための原則にたどり着きます。それはたとえば、「人は善良である(他人に責任を押し付けない)」、「対立はすべて取り除くことができる」、「どんなに複雑に見える状況も、実は極めてシンプルである」、「どんな状況でも著しく改善することができる」などのような信念でした。
これらの原則(信念)は本当に大切なものばかりですが、この本の一番大事な部分は、原則にたどり着くまでの「道筋」なのだと思います。娘さんとともにゴールドラットさんのレポートを読み、「明晰な思考」を行うための演習をすることで、原則の重要性を知るとともに、合理的な思考法を身につけていけるような気がします。
でも、現実に役に立つ問題解決をするためには、この「明晰な思考」の原則だけではもちろん足りません。たとえば小売業の問題を解決するためには、小売業の業界の実態を詳しく知る必要があります。ゴールドラットさんのレポートでは、調査の重要性や実験を行うことの効果も知ることができます。
……ゴールドラットさんのレポートには、すごく感心させられるような素晴らしい問題解決ばかりが書いてあったので、正直言って、この本一冊を読むだけで、ゴールドラットさん並みの「明晰な思考」がすぐに出来るようになるとは到底思えませんでした(汗)。
ゴールドラットさんは「明晰な思考」の練習をするために、「一つだけ課題を決めてその分析ばかりするのではなく、身近な事例すべてを対象にしたらいい。少しでも気になることがあったら、すぐにその原因と結果について考えてみるんだ。」と娘さんにアドバイスしています。確かに、日頃から問題意識を持って自分の仕事に当たると同時に、日常生活の中で出会う気になることについて「この状態を今より良くするにはどうしたらいいか」と考えるように心掛けると、自分の問題解決能力が磨かれていくような気がします。そうすることで、より充実した楽しい人生を送れるよう、努力していきたいと思います☆