『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』2001/5/18
エリヤフ・ゴールドラット (著), 三本木 亮 (翻訳)

機械メーカー工場長のアレックス・ロゴを中心に繰り広げられる工場の業務改善プロセスを主題にした小説です。仕事や家庭でさまざまな危機に陥ってしまうアレックスの奮闘の物語の中に、業務改善のノウハウがわかりやすい形で盛り込まれいるので、ビジネスパーソンやマネジャーにとって「面白くてためになる」素晴らしい本だと思います。
……と絶賛しましたが、実はこの本が2001年5月に発売された時に最初に読んだときには、「がっかりな内容の本だ」と、まったく逆の感想を抱いてしまったのでした(汗)。当時は、「生産管理」「トヨタのカンバン方式(ジャストインタイム生産システム)」を学んだばかりだったので、物語の中で、工場長や管理責任者が「ボトルネック」という言葉を知らなかったり、「在庫が多い方が良い」と思っていたりするのに違和感を覚えましたし、最終的に問題解決に使われた方法も、「トヨタのカンバン方式」よりかなり劣っていると思ってしまったので、なーんだ、こんな結果なら、こんなに長い(500ページ以上)本を読む必要はなかった……とすごくガッカリしてしまったのを覚えています。
それではなぜ、ここで紹介しようとしているのか?というと、この本は「改善プロセス」を学ぶところに意義がある本なのだと再評価したからです。最初に読んだ時は、「ゴール」にばかり目を向けていたため、最終的な問題解決方法が日本の「カンバン方式」より劣っていたことで、「つまらない解答しか教えてくれないテキスト」と勝手に断定してしまいましたが(汗)、この本の真価は「ゴール」ではなく、そこに至る「プロセス」にあったのです。
さて物語は、工場長のアレックスが、経営の悪化・家庭の危機に直面した場面から始まります。長引く経営の悪化、工場閉鎖までたった3か月の猶予期間、多忙な日々の中ないがしろにしてきた妻との離婚の危機……あまりに悲惨な状況に、アレックスはすっかり意気消沈していました。そんな時、彼は、学生時代の恩師・物理学教授のジョナに偶然出会います。ジョナ教授から教えられたアドバイスをもとに、アレックスは工場の幹部社員とともに、工場を立て直すための業務改善に挑んでいきます。それは、ボトルネック工程のアウトプットを最大限にするように工場内の改善努力を集中させること、ボトルネック以外の工程はフル稼働させずに、適切な在庫水準を維持させるようにすることなど、常にゴールを見て全体を最適化しようと努力することでした。
多忙なアドバイザーのジョナ教授は、教え子自身が自ら悩んで問題解決の方法を導き出せるよう、最低限のヒントしか与えてくれません。そこでアレックスは、部下と共に苦しみながら工場を少しずつ立て直していきます。つまりそれを読んでいる私たち読者も、アレックスとともに、ゆっくり立て直しの方法を学んでいくことができるのです(笑)。在庫は資産とだけ考えるのは間違っていることなど、会計情報の正しい見方や落とし穴、「効率化」の陰に隠された諸問題も浮き彫りにされていきます。
この『ザ・ゴール』では、最終的に「カンバン方式」より劣った生産方式の段階で終了してしまいますが、そこに至るプロセスをじっくり読んでいくと、生産管理に関わる問題やその解決方法を実践的に学ぶことができます。
また、家庭の問題の方もしだいに解決されていくのですが、そこに至るために最も効果的だったのは、アレックスが自らの悩みを子供たちや妻に打ち明けただけでなく、解決方法を彼らにも考えてもらったところにあるような気がします。幼い子供たちが懸命に知恵を絞った解決法もそれぞれに見事で、工場のことをまったく知らない人々の、新しい視点からの意見も、とても貴重なものなのだと思わされました。子供たちの意見を聞くきっかけになったエピソード「ボーイスカウトのハイキング」もすごく秀逸です。
とても「面白くて、ためになる」本でした。残念ながら本書での「ゴール」は中途半端だったようには思いますが(汗)、物語のなかで、生産管理の基本的考え方がどうやってつくりあげられてきたのかを追体験することができるので、いろいろな知識を実践的に感じることができると思います。なお、この本には続編として、『ザ・ゴール2』も出ています。