『クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?』2003/10/31
エリヤフ ゴールドラット (著), 三本木 亮 (著)

大学のエグゼクティブMBAのクラスで、教授と社会人の学生(プロジェクト・リーダー)たちが、プロジェクトの納期短縮遂行のために、議論を戦わせながら現実的なソリューションを求めていくことを描いた小説で、ベストセラー『ザ・ゴール』に続く4作目です。
今回のテーマは、「TOCによるプロジェクトマネジメント」。『ザ・ゴール』、『ザ・ゴール2』で登場したユニコ社も関係してきます(笑)。
舞台は、ある大学の社会人向けMBAコース。所属しているIT関連会社から「製品開発プロジェクトの期間を短縮する方策を探れ」との指令を受けた社会人の学生たちが、プロジェクトマネジメントの講義を通して、課題解決のヒントを見つけるまでを描きます。
このクラス、講義中心の授業ではなく、学生が関係している現実のプロジェクトを題材として、何が間違っていたのか、どう運営すべきかをみんなで議論することで進んでいきます。対象が「現実のプロジェクト」で生々しいので、議論は常に白熱し、凄く実践的な内容になっています。……が、現実にこのような授業を受ける学生の立場になったら、「宿題」として出される「現実のプロジェクト」に関して、こんなにリアルな数字を出せるのかなあ? と冷や汗が出ました(汗)。教授の方は「現実のプロジェクトのリアルな実態」を学べるので、すごくメリットがあるのは確かですが、学生の所属会社にとっては、公にしたくない数字を要求されるような……そう思いながら読み進めていたら、実際に小説内でも学生たちが調査に行き詰まることになったので、ホッとしました(苦笑)。それでも「現実のプロジェクト」を通して、このような議論中心のクラスを行うことは、「現実のプロジェクト」側と学生側の両方に大きなメリットがあるので、社会人向けMBAを行う大学は、大学発のベンチャー・ビジネスを題材に、リアルな数字・実態をさらけ出しつつ議論し、学ぶとともに経営を遂行していくと良いのではないかと感じました(もちろん関係者全員「守秘義務」にサインする必要があると思いますが……)。
さて、物語の中では、さまざまなプロジェクトの失敗の状況・原因が明らかにされていきます。納期直前まで作業を始めない「学生症候群」、結局は無駄になる「セーフティー(時間的余裕)」、間違ったプロジェクトの評価基準など……思い当たるところが、あり過ぎでした(苦笑)。
教授と学生たちは、議論を通してそれらを解決してきます。その原則は、『ザ・ゴール』で紹介されたTOCの考え方と同じで、「ボトルネックとなるリソースの都合を優先して全体スケジュールを立案すべき」ということです。
物語では、プロジェクトの遂行とともに、クリティカルパスがどんどん変化していくこと、マルチタスク(掛け持ち作業)による人的リソース不足という新たな問題が発生してきて、「クリティカルパス」だけをボトルネックと考えることの限界が明らかになってきます。この問題に彼らは、「クリティカルチェーン」という考え方で対応していきます。クリティカルチェーンを考慮しないと、クリティカルパスがあちこちに移動して、結局はコントロール不可能になってしまうのです。クリティカルチェーンは、例えば、ある専門家だけしか出来ない複数の作業などが対象になります。
この「クリティカルチェーン」マネジメントの特徴は、1)マネジメントに人間行動の特徴を織り込む)、2)不確実性(バラツキ)を織り込む、3)投資判断の新しい尺度(フラッシュ)を用いることなどにあり、本書の中で詳しく紹介されています。小説形式で、具体的な事例をもとに、プロジェクトマネジメントの基本をじっくり追っていけるのは、素晴らしいケーススタディになると思います(小説なので、無関係な描写もあって展開が遅く感じるかもしれませんが、そのおかげで頭を休めながら「問題解決」を学べるのかもしれません(笑))。
そしてなんと言っても、ここで紹介される「クリティカルチェーン」マネジメントは、マネジメント手法として実践的に役に立ちそうに感じます。「作業ごとの期間設定はしない」、「余裕時間は必要なところに集中する」、「不確実性(バラツキ)を織り込む」などの具体的な手法は、試してみる価値があると思います。「余裕時間は積み増しされる」「学生症候群(ぎりぎりになるまで作業に着手しない)」などの人間的特性を織り込んであるところも、現実的だと感じました。
とても参考になる本でした。プロジェクト・リーダーをしている方はもちろん、すべてのビジネスマンにお勧めします☆