『人生が変わる! 無意識の整え方 – 身体も心も運命もなぜかうまく動きだす30の習慣』2016/1/26
前野 隆司 (著)
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「無意識」と深く関わるエキスパート4人との対話を通じて発見した「無意識が整うコツ」を教えてくれる本です。
4人のエキスパートとは、心身統一合氣道会会長の藤平信一さん、東大卒の気鋭の僧侶・松本紹圭さん、森の中で経営者や子どもたちへのプログラムを実施する株式会社森へ 代表取締役・山田博さん、東大病院循環器内科助教の医師・稲葉俊郎さんです。
武道、宗教、自己啓発、医療分野で「無意識」との関わりを極めている方々と、ロボット工学や人工知能を研究している前野さんとの対話集ですが、心に響く素晴らしい言葉が満載☆ 各分野の達人と、幅広い素養を持つ前野さんが対話することで、「無意識」に関する、とても深い掘り下げがなされたように感じました。
また、各分野の達人たちが、「極意」のようなものまで惜しげもなく披露してくれる、心の広さにも感服しました。たとえば合氣道の藤平さんの先代は、「気とは海中の水を手で囲うようなもの」とよく表現していたそうです。「手のなかにある水は「自分のもの」ともいえますが、大きな海の一部に過ぎません。気もそうだというんです。(中略)手にした水を独り占めしようとしっかり囲っていると、だんだん淀んで腐ってしまいます。気もまた通わせずにいると淀んでしまう。気も自分も天地の一部であるのだから、周囲と通わせることで、澄んだものとして活かすことができるんです。」
……まさにこれこそが「無意識」の整え方の極意のような気がしました。
何気なく手にしたこの本でしたが、読後は「凄い本を読ませていただいた」という感謝の気持ちに包まれました。ぜひ日本発の哲学書(自己啓発書)として、世界中の人に読んで欲しいと思います。対話形式ですが、各達人との対話の後に「無意識を整える習慣」として「まとめ」のようなものが載っています。ただしこの「まとめ」に深い意味をもたせられるのは、やはり対話を読み込んでこそなので、「まとめ」に囚われずに、自分なりの考えで対話を読むことが大事だと思います。
ただ……「イントロダクション」に書いてあった、著者の前野さんがこの本をつくるきっかけになった『受動意識仮説』(意識は無意識の決定を記憶する装置にすぎない)については、手放しで賛同することは出来ませんでした。前野さんの提唱する『受動意識仮説』は、1983年カリフォルニア大学サンフランシスコ校の医学部神経生理学のリベット教授が発表した「人間が指を動かそうとするとき、筋肉を動かすための運動神経の指令(無意識)は、心が「動かそう」と意図する脳の活動(意識)よりも0.35秒も先だった」という実験結果を説明できる仮説だそうですが、誤解を招きかねないネーミングに思えます。この本の対話の中で、光明寺僧侶の松本さんも、「受動意識仮説には、運命決定論的な怖さがあると思います。これを受け止めるカギは「わたしは、たしかにある」という信念ですよね。」と指摘していますが、私も同じように危惧してしまいました。
というのも、「無意識は常に意識に先行する」みたいな勘違いを招きかねないからです。もしもそうならば、たとえば後にロボット学者になる天命を受けているロボット好きの子どもなら、ロボットのことを考えつづけているだけで、工学的知識(意識)がまったくないまま、手が無意識に精巧なロボットをつくり出してしまうということが起こるはずではないでしょうか? そんなことは、とうてい信じがたいのですが……。
もっとも「無意識が意識に先行する」こと自体は、起こりえるとも思います。たとえば危険を察知して腕を振り上げるような時には、何か「気配」を無意識で察知するのかもしれませんし、合気道の達人が技を修得するときのように、「意識しなくても当たり前のこととしてやれるようになるまで繰り返し」ていることならば、生得的本能によらず、後天的にも「無意識が意識に先行する」ことが可能なような気もします。また創造的な仕事をしているときに「思いがけないアイデアが天から降ってきた」ような感覚を持つのも、この境地に至っているときなのかもしれません。
私が誤解しているだけなのかもしれませんが、『受動意識仮説』については、もう一度考え直してみて欲しいと感じました。また、ぜひ脳科学的に検証して欲しいとも思います。
ということで、実は「イントロダクション」を読んだときには、けっこう批判的な気持ちで読み始めた本でした(汗)が、最初の合氣道の藤平さんとの対話から、一転して、内容の深さに感動させられました。他の3人との対話も、心に沁みわたるような素晴らしい示唆に満ちていて、達人と言われるような人は凄いなあと素直に感動し、読み終わった時には、感謝の気持ちに満たされました。素晴らしい本なので、ぜひ多くの方に読んで欲しいと思います。