『心と脳――認知科学入門 (岩波新書)』2011/9/22
安西 祐一郎 (著)
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人間とは何か? 心のはたらきとはどのような仕組みか? それは脳の中でどのようにできているのか? 人間の思考や言語などを解き明かし、社会性や創造性の核心に迫る「認知科学」の全体像がわかる入門書です。認知科学の基礎になっている考え方と方法、歴史の軌跡、現状と将来の課題が、分かりやすく説明されています。
内容は3部から構成されています。
まず「第1部 人間とは何か」では、心の働きがもたらす様々な人間像や身近な現象について、例をあげた後、こうした人間像や現象を産みだす心と脳の働きについて解説しています。
そして「第2部 認知科学の歩み」では、優れた学究が分野を超えて新たな知的試みを創り出してきた、20世紀の半ばから最近に至る認知科学の歩みを紹介されます(誕生:一九五〇年代の息吹き、形成:一九六〇年代の潮流、発展:一九七〇年代の広がり、進化:一九八〇年代の展開)。
最後に「第3部 未来へ」で、この20年ほどに得られた新しい知見と、これからの方向について考察しています。
認知科学について、すごく幅広く網羅的に紹介されているので、一つ一つの内容は簡単に説明されているだけですが、全体を眺めることもできますし、どのような研究がなされてきたのかも分かりますので、入門書としてだけでなく、認知科学の歴史に関する参考書としても使えると思います。
さて、最近はfMRIなどの脳活動の計測ができる機械によって、脳についての知見がどんどん深まっています。が、脳や心については、まだまだ「少しだけ理解が進んだ」段階にあるのだと思います。「心」はそんなに単純に理解できるものではないからです。
例えば、この本でも紹介されているように、「虹の色はいくつ見えるか」に関して、日本では7色(紫、藍、青、緑、黄、橙、赤)、アメリカでは6色(藍なし)、ドイツでは5色(藍、橙なし)に見えるそうです(!)。「虹の色がいくつ見えるかは、色を表すことばが言語圏や文化圏の中でどう共有されているか、地域社会の人たちが虹の色をどんなことばで表現しているかに依存している。」のだとか。「虹の色=7色」と単純に憶えていたのですが、こう言われると本当に「藍色」が見えていたかどうか、自分でも曖昧に感じてしまいました(汗)。雨上りの空にかかる虹は何度も見たことがありますが、その時その時で見え方も違いますし、ぼんやりしか見えないことが多いのに、「7色」と思ってしまうのは、そう「教えられた」からなのでしょう。「心」の働きはこのように、文化的背景でも違ってしまうのですね。難しい……。
それでも今後、「認知科学」に関する研究も、現在どんどん進みつつある人工知能や脳科学の知見をとりいれて飛躍的に進んでいくと思います。もちろん「認知科学」研究の方も、人工知能や脳科学の発展へ大いに貢献することでしょう。その進歩をとりこんで、定期的にこの本の改訂版を出していただけると嬉しいなと思います。